Features Vol.01

GINZA SIXの立ち上げに
込められた想い

01

商業建築の理想は、
変わらないものと変わるものの共存

ARCHITECTURE

谷口吉生

Features Vol.01

01

商業建築の理想は、
変わらないものと変わるものの共存

ARCHITECTURE

谷口吉生

「ひさし」と「のれん」が
表現するもの

「建築は人間のための器である」

GINZA SIXの建築を手がけたのは、常々そのような考えで「器の中身」を引き立てる建築美を追求してきた日本を代表する建築家、谷口吉生だ。また歴史や痕跡という敷地条件と使用者である人との関係を第一とし、今回は特に建築における外観、さらに初期段階の都市デザインを担当。いずれも一番の課題は、ビルディング単体の設計を超えて一帯の再開発というGINZA SIXの最大の特徴であるスケールを活かすこと。一方でGINZA SIXという巨大な建物が建つことで、もともとの銀座にある路地の人の動線が途絶えることがないようにすることだった。

そのために、まず建築面ではGIZNA SIXの大きさを示す象徴として「ひさし」を提案。そのスケールゆえ、銀座のあらゆる路地から見えてくる建物が一目でGINZA SIXだとわかるように、オフィスが入る上層階ごとにステンレスの「ひさし」をぐるりと巡らすことで、水平的な統一性を表した。対して下層階を占める商業空間のうち、中央通りに並ぶ6ブランドのファサードを「のれん」として提案。「ひさし」とは対照的に、垂直方向に建物を小さく分節化することで人が中に入りやすい、銀座の細やかな路地の世界に繋がるスケールを表現している。

「建築は、当然その価値は永続的であった方がいい。一方でGINZA SIXのように商業建築の場合は、時代の変化や流行に従って、店舗の外観やサインにしても、すぐ付け替えられるのが理想的です。特に商業建築では、このような変わる部分と変わらない部分の共存が求められます。建築全体を統一する「ひさし」は変わらない部分であり、それに取り付けられる「のれん」は変わる部分です。何十年後も、GINZA SIXの建築の幹であるステンレス製の「ひさし」は、永久に今のままに街の姿を映し続け、ブランドによって自由にデザインされる「のれん」は、時代とともに変わり続けていく風景が理想です」

ところでGINZA SIXが規格外のスケールである所以は、建物の表が接する中央通りと、裏が接する三原通りの間のあづま通りを含む二街区を一体化し、再開発した点にある。谷口が初期に関わった都市デザインではあづま通りを三原通り側に付け替え、地上部分は公園であった。その後、地上部分を観光用バスターミナルとし、その上にデッキを設けて、空中庭園のような空間とする計画となった。

ちなみに三原通りはかつて、柳が生える東京湾の船着き場でもあった。「設計者のモラルとして大事なのは、発注者のさまざまな要望に応えることと同時に、近隣環境への配慮を怠らないこと」。緑のデッキは中央通りの歩行者を三原通りへ引き込み、さらに周辺の路地へ分散させるためのものであるとともに『自然と水のある、憩いの場がほしい』という近隣からの要望の一つに応えたものである。

三原通り側にはオフィスのエントランスも設けられた。中央通りからGINZA SIXに来る人々は、ショッピングをはじめとした非日常を楽しみにやってくる。だが、オフィスワーカーにとってGINZA SIXはあくまで日常の場所だ。「オフィスに通う人のなかには、ショッピングとは関係がない人もいるかもしれない。一方、中央通り側は日本の商業の一等地。だからこそ、三原通り側と中央通り側それぞれに、違う顔を作った方がいいのではないか」

なお、谷口の個人的な記憶にも通じる、歩行者のための街を象徴する銀ブラという言葉は、銀座という街の時代を超えるポテンシャルを感じさせるとも語る。

「小学3年のときに疎開先から東京に戻ってきたら、有楽町駅が焼夷弾で破壊されていて、銀座の通りにはバラックと呼ばれた露店がずらりと並んでいました。でも、それはそれで今とは違った面白みや活気があった。そんな終戦から72年目にGINZA SIXは誕生するわけですが、銀ブラというキーワードを内包する商業の中心地としての歴史が当時から今も変わらず、街に受け継がれているのはすばらしいこと。建築は新しく創造すると同時に、そうした歴史を繋いでいくことも重要であると思います」

GINZA SIXに思い出を刻む主人公は、谷口に「器の中身」を託された私たちだ。そんな一人一人の記憶がまた、未来に銀座を伝えていく。

(2016年10月インタビュー)

Interview and Text by Yuka Okada / Photograph by Toshiharu Kitajima

© Timothy Greenfield-Sanders

谷口吉生
建築家

1937年東京生まれ。ハーバード大学で建築を学び、丹下健三氏のもとで経験を積む。主な作品に「東京都葛西臨海水族園」「東京国立博物館法隆寺宝物館」「ニューヨーク近代美術館」「京都国立博物館平成知新館」など。現在「ホテルオークラ東京」新館のプロジェクトに参加し、建築家の父・谷口吉郎氏の生誕地(金沢)に建築博物館のプロジェクトなどが進行中。

© GINZA SIX Retail Management Co., Ltd.

© Timothy Greenfield-Sanders

谷口吉生
建築家

1937年東京生まれ。ハーバード大学で建築を学び、丹下健三氏のもとで経験を積む。主な作品に「東京都葛西臨海水族園」「東京国立博物館法隆寺宝物館」「ニューヨーク近代美術館」「京都国立博物館平成知新館」など。現在「ホテルオークラ東京」新館のプロジェクトに参加し、建築家の父・谷口吉郎氏の生誕地(金沢)に建築博物館のプロジェクトなどが進行中。