Features Vol.01

GINZA SIXの立ち上げに
込められた想い

02

これまでにない空間の力で、
銀座の新しいスタートポイントに

INTERIOR

グエナエル・ニコラ

Features Vol.01

02

これまでにない空間の力で、
銀座の新しいスタートポイントに

INTERIOR

グエナエル・ニコラ

商業施設を考える3つのポイント

今回のような商業施設のプロジェクトには3つのポイントがあると思います。一つは空間にアイコニックなエレメントを作らなければならないこと。例えば、今の時代はフォトジェニックだけでなく、メディアジェニックも大切です。施設を訪れた人々が写真を撮るときに「ここはGINZA SIXだね」と一目でわかる場所が必要で、パリの街で言えば、エッフェルタワーみたいなものですね。GINZA SIXでは2階の大きな吹き抜けのアトリウムをアイコンに据えています。

二つ目は、さまざまなストーリーボードを作ってシミュレーションをすることで、空間のなかの人の動きをデザインすること。ある場所からある場所まで何分かかるのか。その場合、エレベーターはもう一基必要ではないか。このあたりで光に出会いたいので、吹き抜けを設けようか…。空間のエネルギーが自然と循環し、人間の感情や身体感覚に対してストレスのない空間であること。ここは建築家とのコラボレーションが必要な部分でもあります。

最後の三つ目は、ダイナミックな空間とリラックスできる空間という緩急を設けること。商業施設で買い物をするスピードは人によって異なります。GINZA SIXではほっと一息付ける空間として、オリジナルでデザインしたソファをコクーンのようなプロポーションにし、背後に木の屏風を置いて、インティメートな空間を作り出しています。

一方で壮大なスケールのフロアが単調にならないように、銀座の裏に残る小さな路地などをイメージし、ショップが並ぶ通路をジグザグにデザインしました。そのジグザグによってすべての店に角が生まれ、通常の商業施設のように一つの通りを直線的に見渡せないことで、まさに路地の通りを歩きながら一つ一つの店に出会う高揚感を味わうことができるようになっています。

第一に誰のための空間であるべきか

GINZA SIXは世界中から人々を招き入れる、インターナショナルな商業施設になると思います。ただ、インテリアには日本のエッセンスを入れたかった。外から来る方々を意識するのは大切ですが、まずは日本に住む私たちや自分の家族が喜べる空間を作りたかったのと、そこからズレてはいけないように思いました。

例えば日本の建築では障子や行灯でふんわりとした光を行き渡らせる工夫がなされていますが、GINZA SIXでは吹き抜けのアトリウムの天井に3Dの和紙をあつらえて、トップライトから落ちる自然の光を優しく透過し、その光が全体に回るようにしています。階段の手すりにはルーバーを用い、竹をイメージした格子をあしらいました。

空間を引き締めるクラフツマンシップをどう見せるかにもこだわりました。できるだけハンドメイドの素材を使うようにして、一部のエレベーターホールの壁はアルミの表面をテクスシャーのあるラッカーで仕上げています。ショップが並ぶ通路の壁にはポイントごとに職人による和紙を使用しました。こうした素材のレイヤーやクオリティでどう空間を見せるかは、GINZA SIXに限らず、私のすべてのプロジェクトに通じるデザインのポイントでもあって、日本のデザインもやはりレイヤーとクオリティで成り立っているとも言えます。ただし、今回は壮大なスケールのGINZA SIXが大きな工場のような印象を与えないために、そのバランスに気を配っています。

GINZA SIXが掲げる“New Luxury”というのも「これがすごいよね」と一点で語られるものではなく、あくまで全体を通して感じるものではないでしょうか。インテリア以外にも、建築があって、グラフィックがあって、アートがあって、能楽堂のような文化もあって、自然が感じられて、ホスピタリティがあるということ。逆に言うと、高級旅館であってもビジネスホテルであってももしかしたら大差はなくて、全体のバランスがよければ、「どちらもすごいね」ということになるのだと思います。

商業施設に必要な最後のレイヤー

私個人的には、銀座は裏通りが意外に面白いと感じています。美味しい飲食店もいっぱいありますし、アート&クラフトの店、小さな建物の中にさまざまな業態の店が集まっていたりもして、インバウンド需要の波が押し寄せる表通りを歩くだけでは気づくことのできない、濃いカルチャーが残っている。インターナショナルな反面、日本のエッセンスが強い街でもあります。GINZA SIXには240ものショップが入りますが、まさに銀座の裏通りのような「さまざまなお店がいっぱいある面白さ」を出したいと思ってデザインをしました。

ところで、パリに「ボン・マルシェ」という世界最古の百貨店があります。私も大好きでパリに行くとよく買い物に出かけますが、ヒューマンスケールで、リテールのデザインが上手く、セレクションに長けていて、何より高級住宅街にあるので「左岸のお金持ち向け」というキャラクターがはっきりしている。結果、近所の住人でいつも賑わっていて、だから、観光客もやってくるという循環です。

すなわち、商業施設に必要な最後のレイヤーは「人」であり、そのクオリティであるということを忘れてはいけないと思います。GINZA SIXにもまず周辺に暮らす方々や職場がある人々、次に銀座に食事をしに来るような層を取り込んで、東京から日本、そこから海外の人に愛されていくようなメッセージやロジックが必要かもしれません。

皆さんは銀座に行くとき、どこを中心に捉えますか? もしかしたら、今は銀座4丁目の交差点かもしれません。でも、私は「とりあえずGINZA SIXで待ち合わせしましょう」という状況を作りたい。

これまでの商業施設にはないインテリアを持つGINZA SIXが、皆さんに愛されて、銀座の新しいスタートポイントになってくれることを願っています。

(2016年9月インタビュー)

Interview and Text by Yuka Okada / Photographs by Satoko Imazu

グエナエル・ニコラ
デザイナー

1966年フランス生まれ。パリ、ロンドンでデザインを学び、1998年に東京でデザインスタジオ「キュリオシティ」を設立。近年ラグジュアリーブランドのストアをワールドワイドに多く手がけている。

© GINZA SIX Retail Management Co., Ltd.

グエナエル・ニコラ
デザイナー

1966年フランス生まれ。パリ、ロンドンでデザインを学び、1998年に東京でデザインスタジオ「キュリオシティ」を設立。近年ラグジュアリーブランドのストアをワールドワイドに多く手がけている。