Features Vol.01

GINZA SIXの立ち上げに
込められた想い

05

世界的な現代アーティストの作品と、
商業空間の相乗効果を発揮

ART

南條史生

Features Vol.01

05

世界的な現代アーティストの作品と、
商業空間の相乗効果を発揮

ART

南條史生

GINZA SIXで展開する
パブリックアート

銀座というのはやっぱり日本の顔、特に商業の顔じゃないかと思っています。そこにGINZA SIXという商業施設がオープンするというのは、日本の新しい顔ができるということ。しかも建築を谷口吉生さんが設計するとなれば「この国の最高のクリエーターたちが関わって、GINZA SIXを作りました」という姿勢が必要です。

そのときに打ち出すアートは奈良や京都に代表される伝統的な日本というより、まずはクリエイティブなイメージを持った新しい日本を感じさせるものではないかと思いました。GINZA SIXは建築もインテリアデザインも、日本というものを意識してはいますが、あくまでコンテンポラリーなテイストです。一方で、銀座は1960年代から現代美術を扱うところも含めて多数の貸し画廊が増えて、今ではギャラリーが集う街ともいえる。

そう考えたとき、GINZA SIXの中央の吹き抜けに展開するメインのアートは、世界の現代美術シーンで日本の顔になっている方の作品がふさわしいだろうと思い、草間彌生さんにお願いしました。新作を作ってもらい新鮮さを出しながら、日本らしさも感じさせるものにならないかなというのがこちらの思惑です。ちなみに、この吹き抜け部分のアートは不定期で入れ替えていく予定です。

商業とデザインは相性がいいですが、商業とアートはそれほどコラボレーションのチャンスがなかった。それに、あまりアートがとんがりすぎていると受け入れられない。でも、ある程度とんがっていなきゃアートをやる意味がない。なぜなら無難な作品になると、それこそデザインの一部に見えてしまいますよね。GINZA SIXではそうしたアートと商業空間のバランスと相乗効果にも注目してもらえたらと思います。

ちなみに「アート&ライフ——現代アートをより身近なものに」は森美術館のモットーでもあるのですが、私は生活の中にアートがあまねく行き渡るのが理想ではないかと思っています。アートが富裕層のためだけのものではなく、一般の人たちも気軽にアートを購入でき、それが日常生活の中にあるというイメージです。素敵ですよね。それこそが豊かな生活といえるのではないでしょうか。

そういう意味で、今回のGINZA SIXのように商業施設のなかにもアートがあって、なおかつアートがその施設の活動に貢献するのは理想的だと思います。さらにその施設の性格を象徴的に表していくような、アートならではのメッセージ性を演出できると、素晴らしいと思います。

銀座の街をめぐる記憶

1970年代、並木通りに「レンガ屋」という、当時最高と言われたフレンチレストランがありました。大学生の頃、その上階にある出版社の『トラベルタイムズ』という旅行雑誌の編集部で2年くらいアルバイトをしていました。社長がそのレンガ屋で食事をしながら、エアラインやホテルや旅行業界の外国人にインタビューをするんですが、僕はそこに同席してメモを取って、写真を撮って、通訳までしなくちゃいけなかった。それをしながら、フランス料理のフルコースを全部食べなきゃいけないわけで、振り返ると、すごいテクニックですよね(笑)。それが銀座の思い出。

一方、大学時代からの友人には銀座の老舗の旦那たちがいて、明治以降の東京の商人文化を担ってきた彼らは、銀座に今も誇りをもっていますよね。ブランドショップが居並ぶようになった今も「ここは俺たちの町だ」という想いをもっています。また先日、銀座のイベントに呼んでもらって話す機会があったとき、関係者から「銀座はもともと島だったんですよ」と聞かされました。1964年の東京オリンピックのために周りの運河を埋めてその上に高速道路を作る以前、今は地名でしか残っていない「数寄屋橋」「新橋」「京橋」などは、実際に銀座と外を結ぶ橋でした。

たった50年前までは島でもあった銀座。そんな土地の独自の記憶も決して埋もれさせてはいけないように感じています。

GINZA SIXが掲げる「New Luxury」について思うこと

今の時代、ラグジュアリーというものが物ではなく、体験に変わってきています。僕の知り合いが数年前、お客様が持ち込んだギフトを室町時代から続く日本の伝統的な贈り物の作法「折形(おりがた)」で包むサービスを提供する『MIWA』という店を、パリにオープンしたんです。サンジェルマン・デプレの裏通りに暖簾が掲げられていて、小さな店内に入ると床の間があって、ヒノキの一枚板でできたカウンターがある。彼は、着物を着て出てきて抹茶を点ててくれるのですが、僕が訪れた時に客がいた試しはない。それでも続いている。

いったい、どうなっているのか聞いてみたら、ラグジュアリーブランドの企画に携わる人たちが「どう体験をデザインするか」について話を聞きたいと彼を訪ねて来る。それが仕事につながっている。

アートにも今後、物としてではなく、特別な体験を提供する役割が求められていくんじゃないかなと思います。

(2016年9月インタビュー)

Interview and Text by Yuka Okada / Photographs by Satoko Imazu(Portrait), Toshiharu Kitajima(Architecture)

南條史生
森美術館館長

1949年東京生まれ。2006年11月に森美術館館長就任。国内外の芸術祭のコミッショナーやアーティスティック・ディレクター、キュレーターや審査員などを歴任。長年にわたり様々な大型のパブリックアート計画、コーポレートアート計画のディレクションを行う。

© GINZA SIX Retail Management Co., Ltd.

南條史生
森美術館館長

1949年東京生まれ。2006年11月に森美術館館長就任。国内外の芸術祭のコミッショナーやアーティスティック・ディレクター、キュレーターや審査員などを歴任。長年にわたり様々な大型のパブリックアート計画、コーポレートアート計画のディレクションを行う。