Features Vol.01

GINZA SIXの立ち上げに
込められた想い

06

GSIXというロゴタイプに込めたのは、
銀座の持つ軸性

VISUAL IDENTITY

原研哉

Features Vol.01

06

GSIXというロゴタイプに込めたのは、
銀座の持つ軸性

VISUAL IDENTITY

原研哉

銀座にふさわしいロゴタイプとは

銀座という街はピシッとした「軸」を持っていると思うんです。例えば同じ東京の繁華街でも、六本木なんかはぶれてもいいし、むしろぶれているものが集合することが魅力になっているかもしれない。新宿はエネルギッシュな混沌の極みでいい。ですから今回、GINZA SIXというとても大きな商業施設ができてハイブランドも多数入ってくると聞いたとき、ロゴタイプを中心とするVI(ヴィジュアル・アイデンティティ)にはあらゆるものを支える、相当に強靭な「軸性」が必要だと思いました。

一方で谷口吉生さんの建築は派手なテクノロジーや意匠を詰め込んで「すごい!」と言わせるようなものではなく、極めて静的でミニマルです。そういう建築に寄り添おうとするとき、ロゴだけが華奢だったりディテールが賑やかだったりすると、建築の力を削ぐような気がしました。簡潔なものは同じ世界観でつながっていかないと意味がないんですね。

結果、今回のロゴも「こんなにシンプルでいいの?」というものになりました。簡潔ゆえ、ラグジュアリーやファッションだけでなく、伝統文化やハイテクノロジー、コンテンポラリーアート…あらゆるシーンに寄り添えるものになっていると思います。

ちなみに、メインのロゴとして「GSIX」が立っていますが、当初の課題は「GINZA SIXで作ってほしい」というものでした。ただ、私は1983年に日本デザインセンターに入社してからもう33年も銀座が仕事場で、ビルにしても店舗にしても銀座という名前の付いたところばかりだなとちょっと飽きてしまっていて…(笑)。そこで「GSIX」と短縮形を提案しました。

色は「G」だけをゴールドにしています。僕にとって銀座のイメージカラーは金色です。銀座なのでシルバーと言いたいところですが、先ほども話した「軸性」にふさわしい色だと思います。

ファサードを飾る
サインと建築との関係

ファサードのサイン計画というのはどうしても建築ができた後に付加されるイメージがあります。文字の後ろに光を当ててロゴを浮かび上がらせて、といったものが多いのですが、GINZA SIXでは「GSIX」のサインが建築の中に埋め込まれ、はまり込んでいます。夜になると建物の内部から、文字が白く浮かび上がるような印象となります。これは建築と一体で計画しないと成立しません。ですから、銀座通りのビル群のファサードの並びのなかでより緻密に見えるというか、全然違う質と印象を与えてくれるのではないかと期待しています。

また、GINZA SIXの1階に居並ぶハイブランドのロゴと並んでも、「GSIX」のロゴが負けることなく屹立するとともに、それらを支えなければならない。そこで発揮されるのはやはり、ロゴの簡潔さに由来する「軸性」だと思います。

銀座の大通りにある大概のビルは、1964年の東京オリンピックのときにできあがったと聞きました。きっと2020年の東京オリンピックを契機として、銀座はまた生まれ変わっていくでしょう。そのときにどの建築家もデザイナーも、ステレオタイプではない日本を、つまり、江戸の紋章や水引の造型をそのまま持ち出すようなものではなく、どう未来的に表現するかを考えていくはずです。銀座は昔も今も日本を経由した新しい生長点を意識している街なのです。

そういう意味でGINZA SIXのロゴは「和」でもあり、外から来た人々をどう迎え、応接するか。そのあたりを考えながら作っています。

GINZA SIXに期待する役割

日本流の「価値」の示し方には、独特の方法があります。僕は海外の人にこれを説明するときに「Empty(空っぽ)」という言葉を用います。多くを示して圧倒させるのではなく、できるだけ何も示さないで、むしろ相手のイメージがあふれ出てくるのを受けとめることで価値を生み出すという方法です。

豪華絢爛なトプカプ宮殿のように宝石が散りばめられたような表現で人の注意を呼び込む手法もありますが、情報をこれでもかと詰め込んだりするのではなく“空っぽ”にしておく。そして、知らず知らずのうちに、人々が勝手につくり出したイメージでそこが満ちているというような。そうした方法で生み出されるのが、この国ならではのラグジュアリーということではないかと感じています。

例えば床の間は、花を一輪生けるとか、軸を一幅配することで何かを表現する。「見立ての方法はあなた次第」といった感覚を上手に運用できると、日本は面白く見えるんじゃないでしょうか。

そんな日本流のラグジュアリーを体現し、「欲しい」と言わせる。僕らが持っている文化の背景を咀嚼しながら、日本にわざわざ来て買いたいと思わせるものをどうやって見せていくか。

もしかしたら、今までハイブランドが示してきたラグジュアリーとは違うかもしれない。でも、そんなことが体現できれば、GINZA SIXの掲げる“New Luxury”にも結びついていくのではないかと思います。

銀座の真ん中にそうした価値を生み出し続ける心臓があったらいい。GINZA SIXにはそんな役割を期待したいですね。

(2016年9月インタビュー)

Interview and Text by Yuka Okada / Photographs by Satoko Imazu

原研哉
デザイナー

1958年岡山生まれ。日本デザインセンター代表取締役社長、武蔵野美術大学教授。長野オリンピックの開・閉会式プログラムや、愛知万博の公式ポスターを制作するなど日本の文化に深く根ざした仕事も多く、「もの」のデザインと同様に「こと」のデザインを重視して活動中。GINZA SIXではTSUTAYAのVIも手がける。

© GINZA SIX Retail Management Co., Ltd.

原研哉
デザイナー

1958年岡山生まれ。日本デザインセンター代表取締役社長、武蔵野美術大学教授。長野オリンピックの開・閉会式プログラムや、愛知万博の公式ポスターを制作するなど日本の文化に深く根ざした仕事も多く、「もの」のデザインと同様に「こと」のデザインを重視して活動中。GINZA SIXではTSUTAYAのVIも手がける。