銀座 平翠軒 森田店主が惚れ込んだ季節の便りを食卓へ Vol.49
銀座 平翠軒
Food
玄冬:白々と明ける冬空の底にある春の気配
隠れ里の柚子こしょう
今はやりの柚子こしょうはもとは九州大分日田あたりが発祥とされていて、この地の郷土食用に開発された和の香辛料です。
今では結構メジャーになり色々と便利に使われていますが、チョット前までは冬の鍋物の添え物でした。
現在では和食ダイニングの広がりと共にヨーロッパあたりでもさかんに使われています。
例えばカルパッチョのソース作りに、あるいは豚、羊肉の臭い消しに等々用途は際限りなく拡がっていくようです。
私共では熊本県のほぼ中央にある平家の落人部落と言われる五家荘で作られているものを扱っています。
五家荘は険しい山道を際限なくくねくねと登っていく現代の秘境とも言われる所ですが(二度と行きたくありません)、この地の特産の唐辛子と柚子を使って作られます。
名前から少し誤解を生むようですが胡椒は唐辛子の古語で今では九州に方言として残っていますが、作り方は唐辛子を粗く刻み柚子皮と塩を入れてすりつぶし熟成をさせて作ります。
この柚子こしょうを作ってくれる”いずみ”さんは唐辛子と柚子の生産者で代々伝わる製法で作ってくれます。
泉さんは時々私共を訪ねてくれますが”久しぶりに下界におりてきた”と神様みたいな事を言うのでさすが高千穂の峰々を眺めて暮している人は言う事が違うなあと密かに思っています。
いずみさんが作る柚子こしょうは3タイプあってそれぞれ色が違います。
一般的な緑のものは辛味が強いタイプ、赤の物は香り、そして黄色は特殊な種類の唐辛子で黄金一味とも呼ばれる激辛のものです。
希少種なので量は市場にあまり出てきませんが地元の人はコストパフォーマンスが良いのでほとんどこの黄色を使うという事です。
私もこの黄色が好みです。
色々な使い方があり、例えば肉の上に乗せてやる、味噌汁に入れる等ですがお勧めはシャブシャブの薬味として使います。
通常シャブシャブのタレは胡麻だれかポン酢を使いますが、私は蕎麦のつけ汁を好みの濃度に薄めてタレにします。
そしてこの柚子こしょうをタップリと溶かし込んで熱々の豚肉を食べるとこれはもうたまりません。
なんとなく大人喰いという感じでシャブシャブの最も旨い食べ方であると自負しています。
皆さんも一度試してみられてはいかがでしょうか。
緑色:内容量 50g、価格 520円(税抜)
赤色:内容量 50g、価格 520円(税抜)
黄色:内容量 50g、価格 700円(税抜)
伊勢うどん
伊勢うどんについてはものの見事に二手に分かれます。
美味しいという派と二度と食べたくないという派に。
このうどんは伊勢地方独特の地方食で直径一センチほどの太さでコシが全くない柔らかいモチモチ感の強い麺が特徴です。
それをたまり醤油に鰹節、いりこ出汁、昆布出汁で割ったタレをかけて食べます。
具材はほとんどなく刻みネギ程度です。
うどん県とも言われる四国香川の人にこのうどんを食べさせた事がありますが、完全に怒りました。
"おこるで!わし、じっさい!”と大声を出されました。
このうどんは一時間近くも茹でるのでもう当然麺のコシは皆無となり太いメリケン粉の塊のようになるのです。
しかし、しかしですよ、私は実は好きなのです。
確かにミカケはうどんに似ているのですが実は全く別の食べ物という風に考えれば新しい食べ物としての側面が見えてきます。
日本人の日常食である蕎麦、うどん、ラーメン等麺類についてはコシが強いかどうかが盛んに議論され、コシの張りと強さのを持つ麺が良しとされますがこの麺はまさにその対極にあります。
両極端を味わってみるのも又、食べ物の楽しみの一つではないのかと思うのです。
特に伊勢は伊勢海老、松阪牛、黒あわび、赤福など超ド級の食べ物がそろっている所にこのなんともシンプルすぎるうどんが名物だというのもまさに食べ物の妙だと思います。
江戸時代、お伊勢参りは町人達の生涯に一度は果たしてみたい夢だったようですが、大変な長旅で心身共に疲れきって伊勢にたどり着いたのでしょう。
その時にこの熱い柔らかな消化の良いうどんがなによりのご馳走だったと想像がつきます。
そんな時代背景が見えてくるようなこの伊勢うどんに私は魅かれるのです。
私共の店では三重の創業300年の超老舗”西村商店”さんの作る伊勢うどんを扱っていますが、なにも足さないメリケン粉のかたまりと醤油だけのこの超シンプルな食べ物は、まさに日本の食の原点に近い物を感じさせます。
他のキラビヤかな和食を食べるよりもはるかに懐かしさと独特の安心感を感じさせるこの食べ物の不思議をいつも食べる度に想うのです。
ひとつだけ裏技を教えます。
このシンプルなうどんに生卵の黄身だけをのせて掻き回して食べると醤油の角がとれて、和製カルボナーラの様になるのです。
内容量:560g(2人前:麺250g×2:たれ30g×2)
価 格:550円(税抜)
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