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Vol.2 Explore with Leica
講師 サトウヒトミ Hitomi Sato

CREATIVE SALONとは…

大人の遊びと学びの場、「LOUNGE SIX CREATIVE SALON」。 多様な分野から気鋭のアーティストをお招きし、クリエイティブな学びの場となるGINZA SIXのVIP会員様だけにお届けするプログラムです。

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2019 Vol.2 Explore with Leica

「LOUNGE SIX CREATIVE SALON」は、さまざまな分野から第一線で活躍するアーティストを迎え、クリエイティブな遊びと学びの場をお届けする、GINZA SIXのVIP会員様のためのプログラムです。講師に写真家のサトウヒトミさんを招き6月8日に開催された2019年度Vol.2のタイトルは、「Explore with Leica」。“旅”を切り口に、世界の各都市で撮影してきたサトウヒトミさんのトークや作品を楽しみながら、彼女の作家人生を一変させたというライカ機の魅力や奥深さに触れる貴重な時間となりました。

ドイツ最高の光学技術が駆使され、厳しい美学に貫かれたライカは、プロ・アマ問わず憧れの対象であり続けてきました。その写真機やレンズを愛用していた著名人は、ロバート・キャパやアンリ・カルティエ=ブレッソン、植田正治など写真家だけでも数え切れないほど。

このライカ機によって作家人生が一変したという写真家・サトウヒトミさんを講師に迎えて6月8日に開催された「LOUNGE SIX CREATIVE SALON」の、2019年度Vol.2のテーマは「Explore with Leica」。“旅”を切り口に、世界の各都市で撮影してきたサトウさんのトークや作品を楽しみながら、ライカ機の魅力や奥深さにも触れる絶好の機会となった本回は、GINZA SIXのVIP会員のためにお届けするにふさわしい、充実した内容のプログラムとなりました。

3部構成で進行したこの日のプログラムの第1部では、そんなライカの哲学や歴史について、ライカカメラジャパンのマーケティング部・米山和久さんが解説。写真機の発展に大きく寄与してきたライカですが、中でも大きな影響を及ぼし、世界に変化をもたらしたのが「小型化の成功」。米山さんによれば、「ライカは極めて高い品質のレンズを開発し、写真機の小型化を成し得ることができたのです。機動性が求められる報道での撮影を可能にし、フォト・ジャーナリズムをスタートさせたのは、ライカだったと言っても過言ではありません」(米山さん)。

第2部では、いよいよサトウヒトミさんが登壇されて、米山さんを聞き手にしたトークセッションとなりました。

御茶の水女子大学で舞踊学を学び、そのまま舞台芸術の道へ進もうと考えていたサトウさんが、進路を変更し、JAL国際線のキャビン・アテンダントの道へ進んだのは、「このまま狭い世界しか知らずにいて良いのだろうか? もっと広い世界を見てみたい!」という思いが湧いてきたからだそう。その当時からカメラを手にスナップを撮影したという彼女にとって、“旅”は今も創作意欲を刺激する原動力であるようです。

続いて、スライドに作品を映しながらトークセッションは続きます。「Layered NY」(2017年・下写真)は、サトウヒトミさん曰く「ニューヨークは様々な人種、車、ウィンドウ、ネオン、音楽や喧騒が重なる、まさにレイヤーの街。そんな自分の印象を表現しようと、このシリーズ内では、街や人の複数のイメージをPC上でひとつのシーンに重ねて作り込んだ作品と、スナップのストレート写真とを混在させています。レイヤーでイメージを重ねる、ということは、記憶の中のシーンが頭の中で重なるのと似ていると感じています。そこに、ストレートスナップを混在させることで、過去に見たシーンと、今見ているシーンとの両方を体験しているような、立体的なイメージを作り出したいと思いました」。

また、みずみずしい空気感とドラマティックな時間が凝縮されたようなイメージが連なる2018年の作品「crossing Prague」についてのトークでは、このプラハで撮影の前に、意を決して購入したというライカ機の話題へ。手に入れたその日から「撮るのが楽しくてしょうがなかった。カメラを毎日持ち歩くようになり、生活の一部になりました」。もちろん、変わったのは生活だけではなく、「一瞬の中に垣間見える物語をみつけにいくような、そんな撮り方に変わりましたし、以前より一層、光を意識して世界を見るようになりましたね」。

プログラムは続いて、第3部のタッチ&トライへ。会場となったLOUNGE SIXには被写体用に花瓶に活けたお花などが用意され、重厚でありながら端正な佇まいのライカ機を実際に手にとって撮影します。美しい躯体、心地よい重さ、そして現実をより鮮明にするレンズを通した視界は、やはり格別。来場者も自ずとサトウさんとの写真談義に話が弾み、閉会間際まで会場は熱気に包まれていました。

Q&A インタビュー

  • Q

    タッチ&トライの時には、ご来場のみなさんと話題は尽きないという様子でしたね。どんなお話をなさったんですか?

    例えば「水平はどうやって保つんですか?」など、技術的なご質問をしてこられる方が多かったですね。

  • Q

    写真の撮影技術は身体訓練に近いところもあって、カメラが自分の体の一部になるくらい使い込むことが重要なんだという写真家さんもいらっしゃいます。今日のトークで紹介された作品の中に、カメラを構えずにノーファインダーで撮影した写真もあって、サトウさんもそのくらい撮り込んでこられたのかなと思いました。

    オートフォーカスの一眼レフで撮っていた時には、ニューヨークでの撮影をすべてノーファインダーで撮るという試みをしたこともありました。ただ、ライカを持つようになってから、撮影対象との距離感により気を使うようになりましたし、光の美しさを強く意識するようになって、撮り方も変わったんです。カメラをしっかり構えて対象に向かい、どんな風に撮るのかを事前に意識しながら撮るスタイルになりました。

  • Q

    スマートフォンの普及で、誰もがいつでも写真を撮れるようになりましたが、サトウさんにとって、スマートフォンと写真機との決定的な違いはなんですか?

    今のスマートフォンについているカメラ機能はすごくよくできているので、スマートフォンのほうが良いという場面はたくさんあると思うんです。仲間内で集合写真を撮って、それをすぐに送りあいたいときとか、もしくは食べ物を撮ってSNSで発信したいというときは、とても便利です。ただ、思い描くイメージや撮り方がある時には、写真機のほうが断然良いですよね。レンズの大きさも決定的な違いです。写真機はレンズが大きいぶん、必然的にイメージにも差が出てきます。画の厚みは一目瞭然でわかりますし、暗いところでもブレずに撮れたり、ボケ味を出してニュアンスを効かせることができたりと、デジタル変換では得られないような調整ができるところは、とても魅力的です。そして、なにより撮るのが楽しいんですよ。ぜひ実際に手にとって、試してみてほしいと思います。

  • Q

    サトウさんの今後の予定をお教えください。

    作品「LayeredNY」で、ZOOMZ JAPAN (※一般社団法人カメラ映像機器工業会が主宰する、カメラと写真映像のワールドプレミアショーCP +が、日本の写真家の世界進出を応援すべく、フランスのLes Zoomsと提携して立ち上げたフォトアワード)でパブリック賞という賞をいただいんですが、その展示を11月にパリでさせていただく予定になっています。一般の方々が投票で選んでくださったことが本当に嬉しくて、大変光栄に思っています。また、これまでの作品は海外で撮った写真が主だったのですが、今は日本をテーマにした作品にトライしているところです。

PROFILE

サトウヒトミ Sato Hitomi

横浜生まれ。東京在住。御茶の水女子大学で舞踊学を専攻後、JAL国際線にて勤務。子育て一段落後に東京ビジュアルアーツにて写真を学び、フリーカメラマンとして活躍。2016年に写真集『イグアナと家族とひだまりと』出版をきっかけに作家活動を開始。2017年ライカGINZA SIXにて「crossing Pragu」展。2018年ライカcafe プラハにて「mosaic of feelings」展。2019年、作品「LayeredNY」にて、ZOOMZ JAPAN パブリック賞受賞。

Text:Akiko Tomita
Movie & Photos:Kiichi Niiyama
Edit:Yuka Okada(edit81)


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