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メゾンのレガシーが息づく、メゾン マルジェラ GINZA SIXの全貌。|The Luxury Code|GINZA SIX

8月8日に、拡張リニューアルオープンしたメゾン マルジェラ GINZA SIX。313平方メートルの広さを誇り、ウェア、シューズ、レザーグッズ、アクセサリーなどフルコレクションが揃う店内にはVIP専用サロンも備えます。創始者マルタン・マルジェラが礎を築き、ジョン・ガリアーノが再定義し発展させたメゾンのデザインコードやシンボルが随所にちりばめられています。メゾンの軌跡に触れるショッピング体験とともに、クリエイティブ・ディレクター、グレン・マーティンスが描くこれからのメゾン マルジェラに迫ります。

メゾンのコードでひも解く
ニュー・ブティックのこだわり

この夏、メゾン マルジェラ GINZA SIXは、広さ313平方メートルに拡張し、シグネチャーカラーの白を基調とした、トラバーチンのナチュラルトーンの空間へと生まれ変わりました。エントランスに掲げられたナンバリングロゴのサインが目を引く、開放的なファサード。天井には、「Co-Ed」コレクションの白ラベルを思わせる巨大な光膜が埋め込まれ、正面の什器に設置されたメゾンのシンボル、4本の白いステッチのネオンがさりげなく主張します。

新しいモダンなデザインコードである、しなやかな曲線が生み出す有機的な空間と調和する、不完全なフォルムで再構築された什器や、U字型に解体されたトラバーチンのベンチ。それらは慣れ親しんだ記憶を呼び起こし新たな価値を見いだす、メゾンのコード「Memory of (メモリー・オブ)」を表現しています。一方、自然にできた細孔を純白のエポキシ樹脂で埋めたトラバーチンの棚やディスプレイテーブル、シートも、衣服の本質的な輪郭を残して解体し、構造を露わにするメゾン独自のテクニック「Décortiqué(デコルティケ)」に通じます。

カーフヘアーにレオパードプリントとユーズド加工を施した新作の「5AC」シリーズ(左)「5AC」ミディアム¥561,000 (右)ミニ ¥506,000
メゾンのコード「Anonymity of the lining(アノニミティ・オブ・ザ・ライニング)」(ライニングの匿名性)の概念が反映されたメゾンのアイコンバッグ「5AC」。上品なペールカラーでシックに。(左)「5AC」ミニ¥385,000  (中)マイクロ¥299,200 (右)マイクロ¥299,200

バリエーション豊かな
アイコンバッグ

メゾンのコードを読み解くように、ブティック内に足を踏み入れると、まず人気のアイコンバッグやスモールレザーグッズ、アクセサリーの多彩なラインナップが出迎えます。なかでも「5AC」は、ジョン・ガリアーノがクリエイティブ・ディレクター就任後、2016年春夏コレクションで、初めて手がけたバッグ。’133t speak : リートスピーク’に着想を得てフランス語の’sac’を符号化したもので、内側の要素であるライニングを匿名化し、デザインや機能として第二の用途を見いだすメゾンのコード「Anonymity of the lining(アノニミティ・オブ・ザ・ライニング)」を表現しています。

(上)「グラム スラム」エンブロイダリー トラペゾイド バッグ¥302,500(左・右) カメラベルトバッグ ミニ¥299,200
クロコダイルプリントのレザーを使用。フロントにコントラストカラーを入れたデザイン「スナッチト」 ショルダー クラッチバッグ(左)スモール ¥361,900 、グレインレザーを使用したミディアムサイズ(右)ミディアム ¥361,900

また、2018年春夏に発表された「グラム スラム」は、フランス・マルセイユ発祥の手縫いのキルト「マトラッセ」スタイルを模したキルティングデザインが特徴的。他にも、折り紙にインスパイアされたアシンメトリーなフォルムのハンドバッグ「スナッチト」、シグネチャーの4本の白いステッチやナンバリングロゴをあしらったウォレットやカードケースなどのレザーグッズがデザイン豊富に揃います。もちろんアクセサリー、サングラス、「レプリカ」のフレグランスコーナーも見逃せません。

(左)カードケース ¥60,500、(右)グレインレザーで仕立てたラウンド型デザイン。ミラードキーリング¥59,400

シグネチャーの4本の白いステッチが入ったエンボス グレインレザー製の小物。ウォレット二つ折り¥74,800〜

フロントのナンバリング ロゴラベルがポイント。「グラム スラム」エンブロイダリー(手前左)ウォレットスモール¥124,300 (右)コインホルダー¥107,800

(右)ミニマルなツイストピアス。カーブチェーンリンクを2個つなげたデザイン。マイヨン ピアス ダブルカーブリンク¥66,000 (中)フロントのタグディテールが印象的な、セミポリッシュ仕上げのシルバー925製インターロッキングチェーンブレスレット¥165,000(左)ナンバリングロゴの装飾が施され、ナンバー11に丸印が刻まれている。ナンバリングピアス¥112,200

メゾンの哲学を反映するコレクション

バッグエリアの奥にゆったりと広がるスペースでは、レディ・トゥ・ウェア、シューズコレクションをじっくりとお楽しみいただけます。2025年秋冬「アヴァン・プルミエール」コレクションは、英国のロイヤルファミリーの着こなしをインスピレーションソースに、“イングリッシュ・ヘリテージ”を表現。英国トラッドをベースにしたワードローブには、「着尽くすほどに愛された」という今季のテーマを物語る様々な加工が施されています。

2025年秋冬「アヴァン・プルミエール」コレクションのウィメンズのワードローブが並ぶ一角。

パテント加工とメタリック仕上げを施すことで、シワの質感を強調し、ナンバリングロゴがあしらわれた長方形のミラーロッククロージャーを採用。「スナッチト」ハンドルバッグ スモール¥324,500

2025年春夏より登場した、柔らかなペブルドカーフスキンを使用した台形シルエットが特徴のハンドバッグ。「ドレサージュ」スモール 各¥368,500

プリーツベルベットを使用し、レーザー加工と手作業によるディストレス加工が経年の趣を演出。「タビ」バレエシューズ¥176,000

ソフトなナッパレザー製、8cmのシリンダーヒールが特徴。「タビ」ブーツ ¥204,600

2025年秋冬「アヴァン・プルミエール」コレクションより。リバーシブルのダッフルコートなどが並ぶ。

キルティングのコーデュラを使用した「グラム スラム」スポーツバックパック スモール ¥400,400

1960年代のスパイクシューズにインスピレーションを受けたデザイン。「スプリンターズ」 各¥154,000

1970年代のオーストリア製スポーツシューズに着想を得たメゾンのアイコンスニーカー。クラック加工を施したアッパーが履き込まれた風合いを演出。「レプリカ」スニーカー¥121,000

クラック加工のブラックカーフレザーにサンド加工を施し、クラシックなカウンティローファーに反骨的なツイストをプラス。「タビ」カウンティローファー¥264,000

経年による日焼けの跡をウェアに反映した「Sun Faded」シリーズのトップスやドレス。メゾンのコード「Memory of (メモリー・オブ)」を表すデニムシャツやニット。コットンレースとシアーオーガンジーを繊細に重ね40年代のナースのユニフォームに着想を得たドレスなどを展開。また、リニューアルオープンを記念し、上質なダブルカシミアを使用したメゾン マルジェラ GINZA SIX限定のコートも登場します。

対照的な2つのパーソナルなスペース

広々としたオープンなエリアの奥には、秘密の隠し部屋のようなスペシャルな空間があります。その一つが、フィッティングルーム。扉を開けると、表からは想像もつかないブラックアウトしたかのような異世界が出現。ハンドブラッシングで何層にも塗り重ねられたダークグリーンの、日本の漆塗りを想起させる深い光沢で包まれたパーソナルなスペースは、グラマラスであると同時に、メディテーションのような落ち着きをもたらします。

もう一つは、VIP専用サロン。美しいドレープが印象的なカーテンに囲まれた白い部屋には、パリの本社に飾られたものにちなんだ複数のフォルムを組み合わせた非対称なデザインの三連のミラーやソファを配します。メゾンの世界に触れながら、特別なひとときを味わってください。

シグネチャー「タビ
ディスプレイ

フィッティングルームへと続く通路の壁面には、パリの本社と同様に、白いペイントが施された「タビ」の木型がディスプレイされています。「タビ」シューズは、メゾンの歴史とともに歩んできたヘリテージであり、その始まりはマルタン・マルジェラのデビューコレクションに遡ります。日本の足袋をヒントに、円柱ヒールをつけたショートブーツは、1989年春夏コレクションのプレゼンテーションにて初めて発表されました。以来、メゾン マルジェラのアンコンヴェンショナルなスピリットの代名詞として存在し、バレエシューズ、ローファー、メリージェーン、スニーカーなど、新たな素材やデザインへと進化しながら、足元を飾っています。

光沢のあるボンデッドレザーで仕立てたデコルテヒールに足を長く見せるアシンメトリーなストラップがポイント。「タビ」ストラップパンプス¥275,000

メゾン マルジェラの
ヘリテージを解説

メゾン マルジェラ GINZA SIXの至るところに見られるメゾンのコードやシンボル。メゾンのコードとは、前述の、慣れ親しんだ記憶を呼び起こし新たな価値を見いだす「メモリー・オブ」、衣服の本質的な輪郭を残して解体し、構造を露わにする「デコルティケ」など多岐に渡ります。マルタン・マルジェラの「解体・再構築」という革新的なアプローチをベースに、ジョン・ガリアーノがコードとして再定義した、メゾン マルジェラの精神を体現する概念やテクニックであり、クリエイションの根幹となるものです。

また、メゾン マルジェラの代名詞ともいえる「白いラベル」と「4本の白いステッチ」は、創業当初、衣服そのものを見てほしいとの思いから、ブランド名を一切記載していない白いラベルを採用し、クチュールの仮留めの縫い方で留めていたことに由来します。匿名性というメゾンの理念の表れであり、もともと糸を外して着てもらう想定だったのが、結果、後ろ姿からも一目でわかるメゾンのシンボルとなりました。

その後、1997年に、0から23の数字を並べたラベルが登場します。丸囲みの数字がそのアイテムの属する製品ラインを示す、独自のナンバリングシステムを考案。これもまた、意味を持たない丸囲みの数字でコレクションを表すことによって、衣服そのものを見てほしいと考えたためです。

オートクチュールコレクション「アーティザナル」を0とし、従来の白ラベルのプレタポルテをジェンダーレスな「Co-Ed」に。さらに1と10はウィメンズ、メンズのコマーシャルにアップデートした「アヴァン・プルミエール」コレクション。4と14はジェンダーレスなワードローブやベーシックなフォーマルウェアを再定義した「アイコンズ」。3はフレグランス、8はアイウェア、11はアクセサリー、22はシューズと分類しています。

そして、9月には新たに「メゾン マルジェラ ライン 2」が始動しました。ナンバリングシステムに加わったこの新ラインは、メゾンのDNAに刻まれたファッションと文化の強固な融合を打ち出す、意外性のある繋がりとクリエイティブな対話に根差したプロジェクトを指しています。ファッションの枠を超え、どんな文化的な化学反応が起こるのか、今後の展開が楽しみです。

グレン・マーティンスが描く、
メゾン マルジェラの未来形

2025年、クリエイティブ・ディレクター、グレン・マーティンスによる新たなメゾン マルジェラが幕を開けます。グレン・マーティンスには、縁があるのか、マルタン・マルジェラとの共通点が多く、共にベルギーで生まれ育ち、アントワープ王立芸術アカデミーを卒業し、ジャンポール・ゴルチェの下で経験を積みました(グレンは2022年にはゲストデザイナーとしてオートクチュールコレクションも発表)。かつてのマルタンもそうであったようにストリート感覚とイノベーティブな精神に、高度なクチュールテクニックをも兼ね備えた彼は、メゾン マルジェラの新時代を牽引するに相応しい人物なのです。

そんな期待とともに、7月に、グレン・マーティンスによる初の2025年秋冬「アーティザナル」コレクションが発表されました。デビューの場に選んだのは、マルタンの最後のショーが行われた会場。メゾンの原点に立ち返るかのように、ランウェイにはマスク姿のモデルが登場。ですが、グレンの表現するマスクは匿名性というだけでなく服と一体化し装飾の一部として成立しています。一方で、ジョンへのオマージュともとれるコルセットでシェイプし強調されたボディライン。それらもグラマラスなアティテュードというよりは、解剖学的シルエットを演出する役割を果たします。

コレクションは、16〜17世紀のフランドル地方やオランダのゴシック建築とその雰囲気から着想を得て、構造や彫像のフォルムを取り入れつつ、静物画のコラージュをプリントしたり、立体的に切り出したり、象徴主義の画家ギュスターヴ・モローの筆致でトロンプルイユのようなハンドペイントを施したりと、ドラマティックでありながら、どこか退廃的なムードを漂わせます。

「解体・再構築」といったメゾンの概念やシグネチャーを再解釈した、ビニールの白衣やクチュールドレス、ヴィンテージのバイカージャケットをパッチワークしたコート、グレンらしいツイストを効かせた誇張されたシルエットのブロンズ彫刻のようなドレス。デニム、ビニール、拾ってきたメタルの箱、リサイクルポリエステルといった日常の素材を、クラフツマンシップと最新テクノロジーによってオートクチュールへと昇華しました。そこにデカダンスとユーモアを交え、ハイブリッドな近世風グランジの趣を演出したのです。

自身も影響を受けたマルタン・マルジェラの哲学と、ジョン・ガリアーノのラグジュアリーなクチュールテクニックを受け継ぎ、グレン・マーティンスの現代的な視点とストリート感覚で、メゾン マルジェラを次なるステージへと進化させるに違いありません。

Maison Margiela メゾン マルジェラ
(3F/03-3289-1877)

※金額はすべて税込みの価格です。
※掲載情報は2025年9月26日(金)時点の情報です。

[CREDIT]

Photographer:
Kosuke Tamura
Writer:
Masumi Sasaki
Movie Director / Camera / Edit:
Yuzuha[DRAWING AND MANUAL]
Movie Camera:
Tetsuya Nakagawa
Movie Camera Chief:
Ginta Nakahara
Movie Producer:
Masahiro Hayasaka[GEEK PICTURES], Akari Murayama[DRAWING AND MANUAL]
Web designer:
Tomohiro Tadaki[Thaichi]
Editor / Producer:
Hitoshi Matsuo, Rina Kawabe[EDIT LIFE]
Planning & Production:
EDIT LIFE Co.,Ltd.