GSIX

Instagram

GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

Switching Gears to Remote Work

平井 莉生

フリーランスの編集者として働いている私にはオフィスがない。昼間は取材や撮影で出歩き、夕方以降は複数の編集部を行ったり来たり、あとは主に自宅で作業をしている。「家で仕事できるなんてすごいね」なんてよく言われたものだけれど、好む好まざるにかかわらずそうせざるを得なかった。雨の日も風の日も、やる気に満ち溢れた日も二日酔いでしんどい日も働かざる者食うべからずなフリーランスなので、何年もかけて自分なりの「快適!リモートワーク術」を身につけてきたつもりだ。

2020年、奇しくも多くの人がそれぞれ「快適!リモートワーク術」を探す年となった。仕事の内容や家族構成、家の間取りによってその答えは異なるけれど、やはりポイントとなるのは、日常と仕事が地続きのなかで“どう気持ちを切り替えるか”というところだと思う。GINZA SIXは、そんな「やる気スイッチ」(もう、これ古いですか……?)を探しに行くにはうってつけな場所だ。まず建物が立派だし。いつもの“パーカーにスニーカー”みたいな格好ではなくて、ちょっと綺麗な洋服に着替えてメイクもちゃんとして、「いざ、お出かけ!」という気持ちで踏み込みたくなる。では、いざ。

銀座の雑踏からエントランスを抜け、めくるめくGINZA SIXのお買い物の世界へ。エスカレーターでフロアを移動しているときから高揚感がある。ずっと自宅にいると、こういう“切り替えの時間”がないから、どうしてものんべんだらりとしてしまうような気がする。

向かった先は、4Fの「CIBONE CASE」。国内外のクリエイターの作品やインテリア、デザインプロダクトが並ぶ。生活感が染み付いた部屋でも、何かひとつの“物”をきっかけにムードが変わるものだ。

クリスマスシーズン真っ只中、デコレーションが施されて華やかな店内で、〈Mt.Hari〉のツリーボトルカバー(15,000円 ※以下全て税抜価格)に目を奪われてしまった。日本のお針子アーティストが、裁縫箱のなかの針山のようなインテリアアイテムを提案しているブランドだそう。一つとして同じ柄のものはなく、ふかふかで、展示されているようにワインボトルに被せるとかわいらしい。「クリスマスに飲みたいワインにこれを被せて、当日を待つのも素敵だなぁ」なんて、早くも脱線して危ない。仕事に役立つものを探さなくては。

視線を足元に落とすと、〈Hender Scheme〉のレザースリッパ(12,000円)が。これは気持ちを切り替えるのにぴったり! リモートワーク成功の第一歩は、「朝起きたら、顔を洗って着替えること」だと思っているのだが(人として当たり前なのでドヤ顔で言うことじゃないんですけど)、せっかく着替えても、足元が裸足やルームソックスではいまいち気持ちが引き締まらない。革靴の底に使っているのと同じレザーをソールに採用し、トラッドシューズのようなタッセルと白いステッチが効いているこのレザースリッパならば、外履きとの間くらいのテンションで過ごすことができる。

机についたら、傍らには自分が気に入っているマグカップや湯のみを置いておきたい。個人的な嗜好でいうと、コーヒーはもちろん日本茶も好き(緑茶のカテキンは、二日酔いの予防や改善に効果があると聞いて)で、日本茶ならばぜひ〈上出長右衛門窯〉の湯のみ(各7,000円)で飲みたい。伝統的な絵柄である“笛吹”が、ラジカセを担いでいたり、スケボーに乗っていたり、レコードを回していたり…、「これはあの人みたいだな」なんて親近感が湧いて、視界に入るとふっと心が緩むのだ。

「CIBONE CASE」は日本の作家による器の品揃えも豊かで、手作りの作品のためひとつとして同じものがない。この日手に取ったのは小野象平さんの作品(9,000円)。陶芸家・小野哲平さんを父に持ち、釉薬の原料から自ら作る作家で、この器もハッとするようなブルーの釉薬が美しい。リモートワークをしていても楽しみなのはランチタイム。仕事中のランチは極力ワンプレートで済ませたいと思うと、この器は大きさも深さも丁度良い塩梅だ。例えウーバーイーツに頼ってしまうときでも、これに盛りつければちょっと良いランチをした気持ちになるに違いない。

他にもイタリアで生まれた香りに関する実験的なプロジェクト〈LABORATORIO OLFATTIVO〉のディフューザー(8,900円)や、広島を拠点に活動する〈叢〉の多肉植物(35,000円)など、部屋のムードを底上げして居心地良い空間を作るのに一役買ってくれる物が「CIBONE CASE」ではたくさん見つかる。

本当ならば仕事部屋が持てる家に引っ越したり、仕事用の机や椅子を揃えたり、大きく環境を変えたくても誰もがすぐそうできるわけではない。でもスリッパや湯飲み、ディフューザーを変えるだけで、スイッチは切り替えられる。大切なのは、何を変えると気持ちが切り替わりやすいか自分のツボを知っておくことだと思う。

例えば、“音”もその「やる気スイッチ」のひとつかもしれない。少なくとも私にとってはかなり重要で、朝目が覚めてメールを返し終えるくらいまではラジオ、込み入った作業をしたり原稿を書くときにはインストゥルメンタル、ゴリゴリ頑張って仕事を進めないといけないときは高めのBPMで……と自分を鼓舞するためにSpotifyをフル稼働させている。次は音の環境向上を狙って、2021年2月28日まで期間限定だという2Fのプレミアムオーディオのセレクトショップ「モノとオト SIT BACK & RELAX」へと足を運んだ。

店内には、Bluetooth搭載の高音質でデザイン性にも優れたオーディオが並ぶ。スウェーデンのオーディオブランド「TRANSPARENT」のスピーカーは、各パーツがモジュール化されていることで取り外して交換できるようになっていて、サスティナビリティを実現しているのだそう。存在感のある黒いボディの「STEEL SPEAKER」(300,000円)もシックだし、強化ガラスでできた透明なタイプ「TRANSPARENT SPEAKER」(138,800円)はアートピースのようだ。

こちらはスイスのオーディオブランド「GENEVA」のもの(18,500円/24,800円)。コンパクトカメラほどの小さなサイズで、直線的でシンプルなデザインと、伸びたアンテナがどこかクラシックな印象。机の上においても邪魔にならないし、キッチンなどに置いておくのにも使い勝手が良さそう。小さいながら迫力あるサウンドで、フル充電から20時間の連続再生が可能だとか。非常用としても、持っておいて損はない。

「どれも素敵だけれど、どれが良いかさっぱり……」と頭を抱えていたら、スタッフの方があれこれ丁寧に教えてくれた。「自分たちが惚れ込んだ海外のオーディオブランドのみを正規輸入販売し、自社の取り扱い商品や面白いと思った商品をキュレーションして販売しています」ということで、もともとは同名のオンラインストアとして2017年に営業をスタート。2020年9月6日に、GINZA SIXに初のリアル店舗を出店したばかりだそうだ。

「やっぱり良い音は良い機材で聞きたい」と思い始めると、ヘッドフォンも気になるし、「Marshall」のポータブルスピーカー(59,800円)も気になってきた。あぁ、これを持ってキャンプに出かけたい……。来年は、音楽フェスに遊びに行けるのかしら……。なんてまたまた脱線し始めたので、気を引き締めて6Fの「銀座 蔦屋書店」へ。

バーン!と目の前に現れたのは大きな熊手。アーティスト・天野タケルさんと「清水屋 芸術部」のコラボレーションなんだとか。「清水屋」は大正14年に創業した埼玉三芳の老舗で、「前向きな解釈と想像力で熊手のさらなる魅力を創造する」という思いで芸術部を発足したのだそう。細々としたフリーランスながら「いつかはちゃんとした熊手がほしいな」と思っていた私は陰ながらインスタグラムなどでチェックしていたので、実物が見られて感激……。欲しい……。

大きな熊手を買えるほど商売繁盛したら良いな、なんて思うと、さすがにそろそろ家に帰って仕事に戻らなければいけない気持ちになってきた。GINZA SIXに「やる気スイッチ」をしっかりと押されたみたいだ。

帰路につく前に、「GINZA SIX ART CONTAINER」をチェック。館内8箇所のコンテナに、「新しい待ち合わせ」をコンセプトにした作品が展示されている。私が気になっていたのは、2Fにあるアーティスト・WAKUさんの作品。内側を真っ黒に塗られたコンテナの中でぼうっと光るネオン管を見つめていると一瞬時間を忘れそうになるけれど、時間を忘れている場合ではない。コンセプトボードのQRコードを読み取ると現在地を共有できるようになっているので、「次はプライベートで訪れて、ここで待ち合わせしよう」と思った。そのためにも、はやく帰ってリモートワークもっと頑張ります。

ART CONTAINER
情報はこちら

Text: Rio Hirai Photos: Megumi Edit: Yuka Okada(81)

GINZA SIX EDITORS Vol.103

editors_hirai

平井 莉生

編集・ライター。1989年東京都生まれ。大学在学中よりアシスタントとして従事し、2015年独立。「POPEYE」「Hanako」(マガジンハウス)、「SPUR」(集英社)などの雑誌や、編集長を務める「ASBS」をはじめとしたウェブ、広告などで活動する。
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

CIBONE CASE

店舗情報はこちら

モノとオト SIT BACK & RELAX

店舗情報はこちら

銀座 蔦屋書店

店舗情報はこちら

2020.12.14 UP

RELATED ARTICLES

Back To All