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GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

My Ginza Journal: Can’t Get Enough of GINZA SIX

荻山 尚

×月×日
小雨がけむる午後の銀座。
ワシントン靴店で靴墨を買うという友人と別れて、S堂の前まで来ると、向こうから田中小実昌さんが若いガール・フレンドと相合傘でやって来た。

と、いうのは「池波正太郎の銀座日記(新潮文庫)」だ。

一方、私の銀座日記は。
×月×日
夜明け前の泰明小学校前。
日曜早朝の銀座はゴミ収集車とタクシーがいるだけで人の気配がない。これから撮影が始まる。ロケバス内ではモデルがヘアメイクにドライヤーをあてられ、スタイリストはパンツの裾上げやアイロンがけ、カメラマンは歩道にてテストシューティングを繰り返している。手持ち無沙汰の編集者こと私はケータリングのおにぎりを頬張りながら撮影コンテを見ているふりをしていたりする。

午前11時に撮影が終わり、解散。Aけぼのでカツ丼を平らげ、K居堂で季節の封筒、K水でパイプ煙草葉を買い求め、やってくるのはGINZA SIX。
これが私の銀座ルーティンだ。

GINZA SIXではまず6Fまで登り、綺麗なトイレを拝借する。喫煙所で一服いただき、蔦谷書店をぶらり小一時間。たっぷり吟味、という立ち読みをさせていただき、明日の糧となる一冊を選ぶ。

次なる目的地は3Fの「BELSTAFF(ベルスタッフ)」だ。
男に生まれたならば、このブランドに憧れを感じずにはいられないはずだ。スティーブ・マックイーン、チェ・ゲバラ、デイビッド・ベッカムなどなど男が惚れる男達が愛したブランドが「BELSTAFF」。ここのジャケットを着たら、マックイーンになれるかも、と私の妄想を掻き立てる。

1948年に登場以来、現在も販売される「BELSTAFF」のトライアルマスターというハーフコート(¥88,000 ※以下全て税別価格)は、リーバイスの501やコンバースのオールスター、エドワード グリーンのチェルシーと同じ男性服の定番中の定番だ。これを持っていなかったらファッション好きとしてはモグリと言われても仕方ないだろう。

内緒だが、私はまだ持っていないのだ。だから、GINZA SIXに来るたびにストック豊富な同店へ足を運び、買うタイミングをうかがっている。色は黒にしようか、紺にしようか。サイズは36か、38か。試着させていただく度に答えは違う。

悩みに悩んでいると、ORIGINなる新ライン(¥96,000)が目にとまる。デザインはトライアルマスターを踏襲しつつも、新素材を使っているから、とにかく軽く、撥水・速乾性にも優れるという。裏ポケットにはスマホホルダーまであって、便利な一着となるに違いない。

羽織ってみる。と、現代のマックイーンを気取るならコチラかしら。と、鏡に映る自分を見て思う。と、同時に「いや、「BELSTAFF」を語るならワックスドコットンの本チャンをまずは持てや!」とファッションの神が私の脳につぶやく。どれも欲しい。いやはや今日も答えを出せない。

さて、半年前にやった仕事のギャラが入ったばかりだから、手ぶらで帰るのもなんだか損した気分だ。損はしていないが、なんだか寂しい。何か買って帰りたい。

そんな欲望を胸に持ち、次にぶらりお邪魔したのは「Gente di Mare(ジェンテ ディ マーレ)」というセレクトショップ。

海の人々を意味する店名通り、ポルトフィーノのカフェやナポリのリストランテ、地中海のヨットが似合いそうなアイテムが拡がる。つまり短パン、タンクトップ、ビーサンではなく、写真のようなコットンジャケット(¥52,000)やリネンシャツがたくさんあるということだ。

目を引いたのはチルコロ1901。こちらは、スウェット生地を使いながらも、品のあるテーラードジャケットを作ることで有名なイタリアのブランドだ。これまではシンプルなシングルブレスのネイビージャケットが多かったが、今季はダブルブレスで、しかもメタルボタンを使ったものがあった(¥55,000)。楽チンな着心地なのに、ダブル&メタルボタンでクラシックな見た目。というギャップにやられてしまった。

私の大好物であるサファリジャケット(¥55,000)を発見! こちらはジャンネットという南イタリアのシャツブランドのものだという。シャツ屋が作るサファリジャケットは、当然ながらシャツを着ているように快適だ。が、胸と腰のフラップ&パッチポケットのデコラティブなデザインで、単なるシャツ以上の着映え効果を誇る。スタッフの方が着こなしている雰囲気もよく、お値段もちょっといいシャツ並みで懐が緩む。

ポケットに手を入れ財布を取ろうとすると同時にスマホが鳴った。見るとLINEのアイコンに1の表示。「昼くらいに帰ってくるといってたけど、どんな感じ? 子供たち二人は早くパパと遊びに行きたいと言ってます」。妻からだ。撮影は昼前に終わるから午後、公園に行こう、と昨夜家族に伝えたのを忘れていた。現在、午後2時半……。

どこのご家庭でもそうだと思うが、夫はなにも悪いことはしていないのに妻に頭が上がらない時が多々ある。急ぎ返信。「撮影がちょっと押していて、あと少しで終わって帰ります」。サファリジャケットが名残惜しい。

さて帰るか。遅れたお詫びになにか手土産でも買って帰るか。

ここは地下2F。百貨店の食品街は本当に楽しい。全国津々浦々の名物が一同に会し、ヨダレを止めさせない。

ぶらり歩くと、ナント! 「荻野屋」があるではないか。若かりし夏、軽井沢からの帰路に必ず食べた峠の釜飯。あの時、助手席にいた彼女はいまいずこ? と思うと同時に、醤油味の出汁が効いた炊き込みご飯、鶏肉、筍、ウズラの卵、栗、杏…のハーモニーが銀座で味わえる奇跡に震えた。ゴクり。

数年前、撮影で富岡製糸場を訪れた際、目の前に同店があり、買って帰り、家族から大好評を得た釜飯。公園遊びをリスケしたお詫びにコチラで機嫌取りをしてみようじゃないか。

おなじみの益子焼の釜と、紙製容器のものもあったが、もちろん前者をチョイス。この陶器を小物入れや灰皿に再利用している。さらに付属の漬物が入ったプラスティックの容器もかわいい形をしているからピルケースとして使っている。なんとエシカルな釜飯だ!

東京に限らず、日本の都市はどんどん画一的な街並みになっているように感じる。でも、銀座には私が大好きな昭和が残っている。さらに、GINZA SIXのようにラグジュアリーだけどホッとできる新しい場所も共存しているのがうれしい。「荻野屋」の上州牛ステーキ弁当に惹かれた。「BELSTAFF」はいい加減答えを出さないとモグリと言われちゃう。サファリシャツ着て旅に出たい。今回は行けなった「焼肉山水」が大好きです。GINZA SIXがとまらない。

Text:Takashi Ogiyama Photos:Yuichi Sugita Edit:Yuka Okada

GINZA SIX EDITORS Vol.79

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荻山 尚

プレミアムなイタリアの情報をお届けるWEBマガジン「Shop Italia(https://shop-italia.jp/)」編集長。センス編集長、レオン副編集長をはじめ数々の男性ファッション誌のエディターを歴任した後、現職。ファッション、クルマ、機械式腕時計など男性ライフスタイルを彩るラグジュアリーなアイテムに加え、昭和居酒屋や純喫茶も大好物。1972年生まれ。
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

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2019.04.22 UP

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