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GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

Examining Oneself While Lost in Thought: A Place for Walking Meditation

呉 佳子

昼下がりの銀座、中央通りには日影がない。
店の軒先のわずかな影に身を潜めながら歩き、影が途切れるとまるで忍者のようにささっと小走り。行き交う人にぶつからないように右へ左へと身をかわす。ファッショントレンドの分析や、今後のトレンド予測を生業とする私は、企画のアイデア、途中まで進んだ原稿、情報飽和の頭を抱え、ことに行き詰まったとき、いつもきまって、歩く。

でもでもでも、最近、尋常じゃないほど暑くないですか?

じりじりと肌をやく日差し。照り返しで路面はキラキラ光っている。7月早々に体温を超える猛暑の到来。とてもじゃないけど、このままでは、じゅわーっと蒸発してしまう! 秋よ、早く来-い!

爽やかな冷気に誘われるように、私はGINZA SIXに避難した。
そう、実はGINZA SIX、一人歩きしながら思索にふけり、ごちゃごちゃした頭をリセットするのに最適な場所。今回は、GINZA SIXでのウォーキングメディテーションで、頭をスッキリしつつ、来たる秋の装いに思いを馳せる、そんなひと時におすすめのルートをご紹介します。

清涼感のある白くクリーンな空間のGINZA SIXでは、館内至る所にアートが点在しているのはご存知の通り。中でも、いつ訪れても見られる常設展で、脳内アルファ波を引き出してくれそうな作品と言えば、デジタルアートの滝「Universe of Water Particles on the Living Wall」。

これは最先端のテクノロジーを使ったアート作品で知られるteamLab(チームラボ)によるもの。3フロアを突き抜ける高さ12メートルの壁面を、水が流れる。といっても、実際に水があるのでも、実写映像が流れているのでもなく、滝は繊細なタッチで躍動感たっぷりに描かれています。何というか、静止しているはずの絵画が突然動きだしてしまったかのよう。落ちゆく水は石に当たってしぶきをあげたり、岩肌を帯のように滑らかに伝ったり。
きらめきながら様々な表情を見せる水の動きをぼーっと眺めていると、いつしか心は、現実と仮想の境目をふわふわ泳ぎだす。雑然とした日々のいろいろが遠くに思えてきたら、準備完了。GINZA SIXでのウォーキングメディテーションが始まります。

ふわっとした気分で館内をぶらぶら。ところで、GINZA SIXの通路に立つとよく分かるのですが、店舗ごとの区画はきちんと一直線に並ばず、出っ張ったり引っ込んだり。これは敢えて整えていないのだそう。まるで路地裏に迷い込んでしまったかのような、そんな雰囲気。どうりで物思いにふけりながらぶらぶらしやすいわけです。

さて、歩みを進めるうち、霧が晴れていくかのように、私に今必要なモノがわかってきました。それは秋のための新しいバッグ。仕事柄、たいていの新作バッグはチェックしていますが、この秋、数多ある中から私が選ぶとしたらそれは、「ALEXANDER McQUEEN(アレキサンダー・マックイーン)」(3階)。

マックイーンと言えば、エレガントなのにアバンギャルド、クラシックに見えてモダン。相反する二つの要素を併せ持つデザイン、どちらか一方に割り切れないその二面性が、複雑なオンナ心をがっちり掴んでいるのでしょう。最近ではイギリス王室のキャサリン妃の御用達というのもうなずけます。

新作の「ジュエルド サッチェル」(¥260,000 ※以下全て税抜価格)は、マックイーンのアイコンバッグ、4つのリングが付いた「フォーリング クラッチ」がショルダータイプになったもの。

リング状になった部分に指をはめてアクセサリー感覚で小脇に抱えられるのがポイント。ビジューの隣のスカルがマックイーンらしい毒を利かせています。

うーん、やっぱりクラッチタイプも捨てがたい。こちら、「フォーリング ポーチ」(¥266,000)はカラフルなビジューの一つ一つがスワロフスキークリスタルで飾られ、より華やかなイメージ。白Tシャツ姿の私ですが、何気にカジュアルスタイルにも合わせやすそう?

ころんとした四角い形がキュートな定番「ボックス バッグ」も健在。かわいくなり過ぎないのは、アンティークの旅行鞄や宝箱にデザインの着想を得ているから。

「こちらも新作です」というスタッフの方の声に引き寄せられて手にした「バケット バッグ」(¥281,000)。

ボックス バッグと同じくアンティークラゲージや中世の宝箱からインスピレーションを得つつ、迷いのない潔いフォルムは“折り紙アート”からのヒントだそう。巷で流行中の巾着バッグとは一線を画す、個性的かつ洗練されたデザインがコーディネートにアクセントを利かせます。

だんだん乗ってきた私は、プレコレクションのラックへ。

手にしたのは、ラッフルディテールと赤いトリミングが印象的な黒のニット。今年の秋の首元は断然タートルですね。このニットは肩部分に大胆なカットオフが入っていて、肩先のナマ肌がちらりと覗きます。タートルや長い袖で肌を覆いつつも、絶妙なチラリズムでセクシーさを醸す。そんなディテールもこの秋のトレンド。ここまで来ると、猛暑の記憶はもう遥か彼方。しばし秋冬のファッションに思いを馳せます。

秋冬と言えば欧米のブランドの最新コレクションではアウターが豊富に出揃っていました。アウターをチェックしなきゃ! というわけで、同じ階の「HERNO(ヘルノ)」へ。

「ヘルノ」は、今年創業70周年を迎えるイタリアのラグジュアリーブランド。高品質のレインコート作りが発祥で、その後手掛けるようになったダウンコートなど、アウターだけに商品を限定しています。

とろけるような肌触りのカシミヤなど最高級の天然素材とともに、アウトドア用品に使用されるハイテク素材を果敢に取り入れたモノ作りを先駆け。心地よい機能性とモダンでエレガントなデザイン性、その上、表にブランドロゴが入ってないこともポイント高く、ファッション業界人に人気のブランド。

まず目を引くのは店内の独特なディスプレイ。コートやジャケットなど商品は全て、フックに引っ掛け吊るされています。今となっては他ブランドでも同様のディスプレイを見かけますが、実はこの手法を先駆けたのも「ヘルノ」。

吊り下げられたレザーベルトは「伝統」を、ステンレスのフックは「モダニティ」を表しているのだそう。歴史や職人技を大切にしながらも、新しい挑戦で自らを刷新していく。ブランドの姿勢が表現されているんですね。

さっそく羽織ってみたオフホワイトのダウンは、胸元から優雅に立たせた大きな襟と、七分袖が特徴的。シンプルなのにエレガントなデザインで、ベーシックなスタイルにはもちろん、ドレスの上でも違和感なさそう。ファッション関連のレセプションやパーティー、ショーなどに出掛けることが多い職業柄、寒い時期に頭を悩ませるのがアウター選び。カジュアル過ぎず(=招待客として失礼にならず)、かっちりし過ぎず(=デイリーにも使いたい)の欲張りなニーズに応えてくれるデザインです。専門ブランドならではのアウターバリエーションも豊富。ニットのアームウォーマーがセットになったケープもチェック。

はっ! ウォーキングメディテーションと言いながら、ただのウィンドーショッピングになってきましたね!(汗)
己の欲望に向き合うのもまた、一人歩きの醍醐味。ぶらぶらしているうちに今日の時間も尽きつつあることに気付いた私は地下1階へ。自分の潜在意識を探りたい!と足を向けたのはこちら「IPSA(イプサ)」のカウンター。

お目当ては肌測定器「イプサライザー」に導入された、デザイン心理学に基づく印象解析ツール。今自分が「こう見られたい」と無意識に思う気持ちをずばりと見抜く、恐るべき測定器なんです。

次々と現れるテイストの違う2枚の画像のうち、直感で「良い!」と思った1枚を選んでゆきます。考え込まず、1ペアにつき1秒。選び出した10枚の画像で、その時の気分やなりたいイメージといった潜在意識が読み解けるのだそう。
私の今日の気分は「エレガント」。前回一度測定した時は「クール」だったから、やはりGINZA SIXをぶらぶらした後の高揚した気持ちが反映されたのかもしれません。

事前に測定した肌色&血色感と、潜在意識の結果を合わせて、おすすめされたラインナップはこちら。リップは、仕事、デート、休日、パーティーと4つのオケージョンに合わせて4色が提案されます。普段は手に取らないような色も、つけてみると不思議、しっくり来る。リップ一本で、新しい自分に出会えたような気分です。

いつの間にかモヤモヤしていた頭の中もスッキリ。GINZA SIXでのウォーキングメディテーションで、酷暑に負けないエネルギーチャージの完了です!私は足取り軽く、館を後にするのでした。

Text:Yoshiko Go Photos:Akemi Kurosaka Edit:Yuka Okada

GINZA SIX EDITORS Vol.49

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呉 佳子

資生堂ファッションディレクター。ファッショントレンドの分析研究やトレンド予測を担当。毎季、コレクション取材で世界を飛び回る……だけならカッコいいのですが、家では2児(3歳、7歳)のお世話に髪を振り乱す毎日。今年はPTA活動の洗礼も受けています。『花椿』ウェブサイトでコラムを執筆中。http://hanatsubaki.shiseidogroup.jp/fashion/
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

アレキサンダー・マックイーン

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ヘルノ

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イプサ

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2018.07.20 UP

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