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GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

The District Within a District: A Pleasant Walk Through GINZA SIX

山田 泰巨

世界有数の商業地と言われる銀座。昨春、とある仕事でこの街を歩き続けることがありました。自らの足で街を歩いてあらためて思ったのは、世界有数の商業地という言葉がもつイメージよりもはるかにヒューマンスケールの親しみやすい街であること。にぎやかな大通りから中通りに足を踏み入れると個性的な店が並び、街の端にあたる一丁目と八丁目ではいまも銭湯が営業を続けていたり。そうした雑多な風景こそが銀座の魅力であると取材を通じてあらためて感じたのです。銀座最大の施設であるGINZA SIXもまた、端正な建物のなかに街が広がるかのような賑わいがあります。まさにぶらりと散策したくなる、銀座という街に生まれたもうひとつの街がGINZA SIXではないでしょうか。

せっかく街歩きを楽しむなら、まずは身だしなみを整えようと5階の「FREEMANS SPORTING CLUB」に足を運びました。ここはニューヨークのローワーイーストに拠点を構える、アメリカントラッドを追求するブランドのショップです。ニューヨークの本店はレストランから始まり、その後アパレルのブティックやバーバー(床屋)をオープンさせ、いま世界中で流行をみせているオーセンティックなバーバーに先鞭をつけたのは彼らだと言われています。実はそのサービスをGINZA SIXでも楽しむことができるのです。残念ながら髪は切ったばかりなので、シャンプーとシェービング(¥5,000 ※以下全て税別価格)をお願いしました。

店内奥のバーバーは、ニューヨークの地下鉄でも使われているというサブウェイタイルに覆われた空間。案内されて腰をかけたのは、アメリカから輸入したというベルモント社のバーバーチェアです。普段の仕事ではデザイナーたちが手がけた家具を取材することが多いのですが、実用性を重視した業務用の椅子を見るとあらためてそのデザインに心がくすぐられます。この店のために探したというヴィンテージの年季のはいった表情が魅力的。手を乗せると肘掛の先端にはアッシュトレーが。もちろんここは禁煙ですが、子どもの頃に通った床屋もこんな感じだったなと懐かしさを覚えました。髪は切らないものの、カウンターに並ぶハサミや櫛、そしてさまざまな整髪料などが気になり、思わず子どものようにカウンターを凝視してしまいます。

まずはシャンプーを。出張続きだったため、頭皮をしっかりとマッサージされる気持ち良さに思わずうとうとしかけましたが爽やかな香りに目を覚ましました。気になってシャンプーの銘柄を尋ねると、アメリカにあるカフェとバーバーを併設した「ブラインド・バーバー」のシャンプー(¥3,500)だと言います。レモングラスの香りが気持ちよく、さっぱりとした洗い心地。ボディウォッシュにも使えると聞き、自宅で使うシャンプーがなくなり次第、乗り換えようと考えています。

つづくシェービングも気持ちよく、またも睡魔との戦いに。自分では剃りきれない細かな部分までケアをしてもらい、余分な角質まで落としてもらった結果、いつもより格段に肌の触り心地がよくなりました。最後はスタイリングもお願いし、どうするとうまくまとめられるかなんて相談も。猫っ毛で髪が細いためうまくまとめられないのが悩みでしたが、ショップオリジナルのポマードと相性が良いこともわかりました。ドレスアップして出かける日などは、まずここで1日のスタートをきるというのも贅沢でいいのかもしれません。

次に向かった4階の「D-BROS」はデザイン会社のドラフトが運営するショップです。グラフィックデザインや広告宣伝の世界でよく知られる彼らがプロダクトブランド「D-BROS」を始めたのは1995年のこと。その名を知らなくとも、ビニールでできたフラワーベースは多くの人に知られたアイテムではないでしょうか。ポップでかわいらしいイメージの強い彼らが、銀座で伝統工芸とグラフィックデザインを掛け合わせた新しいプロジェクトをはじめると聞いた時には驚きました。

けれど、店内に並ぶプロダクトを見ているとそれはごく自然な流れであったことがすぐに理解ができます。日本古来の家紋は、この国に長く根付いてきた「家」をアイデンティファイする重要なグラフィック。時代を超え、その力強さ、ユニークな造形は、いまの私たちをも魅了します。伝統というとつい仰々しくなってしまいますが、本来はそれを時代にあわせてアップデートをしていくのがデザインのもつひとつの役割。ドラフトによってあらためてその魅力を得た家紋はクラシックなのにどこか軽やかで、それを取り入れた扇子などはこれからの季節も使いやすくおすすめのアイテムです。

またここでは、ドラフトのデザイナーたちが自らガラスに手彩色したというガラスキャンドルが。火を灯すとガラスのパターンが炎の揺らぎとともに映り込むというもの。おもわず誰かに贈り物をしたくなります。

さて、最後に立ち寄ったのが地下2階のフードフロア。都内初出店の店も多く、スイーツ好きの僕のために知人が勧めてくれたのが葉山に店を構える「MARLOWE」のプリンです。マンゴーや季節の果物を使ったプリンなど多くの味がラインアップされているため選びきれず、思わず4つも購入してしまいました。定番のカスタード、そして甘さ控えめの抹茶、銀座の風景が描かれたビーカーに入るGINZA SIX店限定のロイヤルミルクティープリン、さらに八海山を使ったブリュレプリン。もちろん定番のビーカーに描かれているのは店名に冠しているフィリップ・マーロウ。レイモンド・チャンドラーが生み出したあの探偵の姿です。

さっそく食べようと向かった先は2階のテラス。銀座の中心とは思えないのんびりとした空間でプリンを広げ、さっそく楽しみました。カスタードの滑らかな舌触りとバニラビーンズの豊かな香りを楽しみつつ、しっかりとしたボリュームに満足。八海山のブリュレはこれに、日本酒の風味が加わって絶品。思った以上に濃厚な酒のあじわいに、昼間から背徳感を覚えるほどです。

目的をもって出かけるのもいいですが、GINZA SIXという街をふらりと楽しむのもおすすめです。髪を切って服や工芸品を見て回り、アートや本を堪能した後は地下で食を楽しむ。地下街は日本国内から集められたさまざまな店で、まるで横丁を歩いているかのように楽しく、次は仕事帰りに酒を楽しもうかと画策しているところです。銀座に生まれた、街の中の街。それがGINZA SIXなのではないでしょうか。

Text : Yoshinao Yamada Photos : Kanako Noguchi Edit : Yuka Okada

GINZA SIX EDITORS Vol.42

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山田 泰巨

編集者。1980年北海道生まれ。『商店建築』『Pen』編集部を経て、2017年からフリーランスで活動。建築、デザイン、アートなどの特集を中心に、雑誌『Pen』『Casa BRUTUS』『ELLE DÉCOR JAPON』『Harper's BAZAAR』『madame FIGARO japon』などで編集・執筆。展覧会の企画協力やカタログなどにも携わる。
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

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2018.05.22 UP

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