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GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

A Cultural Tour of Ginza’s Artistic DNA

富田 秋子

ちょっと唐突ですが、本やレコードの重さで床が抜ける心配をしたことがある方は、どれくらいいらっしゃるでしょうか?少なくとも、学生時代からカメラ雑誌やカルチャー誌で文章を書かせてもらっていた自分は、一人暮らしをはじめた時からすでに“床を心配する派”でした。今回はそんなカルチャー・アディクトのお仲間のみなさまや、文化的な刺激を求めるすべての方々におすすめしたい、GINZA SIXのカルチャー・スポットをご紹介します。

まずは、6階フロアの銀座 蔦屋書店へ。“櫓”にヒントを得たという吹き抜けのイベントスペースや、時宜を得た作品を紹介するアートギャラリーなど、随所にアート展示を展開する店内はまさに美術・文化の一大発信基地といった様相をみせています。

中でも最大の見所は常時6万冊をそろえるというアートブック。そして、ここを訪れると真っ先に足が向いてしまうのが、古書のコーナーです。貴重本の充実ぶりにはいつも驚かされますが、訪れたこの日にはあの幻の写真集、川田喜久治『地図』(美術出版社)に出会うことができました。

1965年にわずか500部のみが発行されたという初版本は、まさにヴィンテージ写真集の最高峰。日本におけるアーティストブックの嚆矢ともいうべき一冊で、原爆ドームの壁に焼きついた“しみ”や特攻隊員の肖像写真などをとらえたハイコントラストな写真群が、全ページ観音開きという斬新な形式にデザインされています。装丁を手がけたのは杉浦康平。アジア図像を研究し、ブックデザインに革新をもたらしてきた日本を代表するグラフィックデザイナーです。

もちろん、リアルタイムな動向に対応したラインナップにも余念がありません。写真家の志賀理江子は、生と死、光と影、見えることと見えないことなど人間の根源的な二元性を、写真を通して探求してきた最重要作家の一人。今年の夏に香川県で開催した展覧会「志賀理江子 ブラインドデート」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)は、作家としてさらなる進展をみせた展示で大きな注目を集めましたが、ここにはその関連本『Blind Date』(T&M Projects)もしっかりと置かれていました。取り扱い書店の少ない本も、きちんと揃えられている。書店に対する信頼は、こういうところで決まるんですよね。

アートブックが並ぶ通称“アートストリート”の入り口には、大型本の特設コーナーが設置。歌舞伎写真の決定版とも言える篠山紀信『KABUKI by KISHIN』(限定1000部)や、「名所江戸百景」の初摺を収録した『広重 名所江戸百景』特装版(限定200部 好きな作品の複製原画1枚をセット)は、ここ銀座 蔦屋書店でしか買えない限定本です。日本の美意識を世界に向けて発信する。その志が、ガラスケースや飾り棚、平台などを使っていたるところに展開されている特集や展示の1つ1つに表れていました。

続いて、1つの下の5階にあるライカ GINZA SIXへ。言わずと知れた、ドイツが誇るカメラ・双眼鏡の名門ブランド、ライカです。ロバート・キャパやアンリ・カルティエ=ブレッソンなど、多くの写真家たちがライカの写真機とともに生き、数々の“決定的瞬間”をとらえてきました。

ここは写真展スペースも設けられたオープンな店構えで、現在はジョン・デイヴィス写真展「Kosen」が開催中(〜12月13日)。日本の古写真コレクターとしても名高いイギリス人写真家が、15歳の舞妓・小扇が芸妓として一人前になるまでの5年間を追った力作です。

まずはライカ史上初のインスタントカメラ「ライカ ゾフォート」をチェック。キュートなルックスながら、二重露光や長時間露光といったクリエイティブな撮影モードも備えた優等生です。

せっかくなので、カメラ・ファン垂涎のライカM型カメラも手にとってみることに。この重さと肌触り、ストイックなボディにクラフトマンシップを感じると言ったら大げさでしょうか?

また、「Kosen」展にちなんで中央の棚に揃えられていたのは、通常はライカ 京都店のみで扱われる京都伝統工芸とのコレボレーション・アイテム。七宝紋の扇子は老舗・宮脇賣扇庵が手がけた限定品でありながら、シャンパンのボトル1本ほどの価格設定。京友禅着物で名高い千總の京友禅柄をプリントしたシルク生地を革の内張に使った贅沢な巾着も一万円代半ばと、プレゼントにも喜ばれそうな品々が並びます。

結局、この日は何も買わずに帰って……来られるはずはなく、銀座 蔦屋書店で見つけた芸術新潮1989年7月号(特集「写真家が選んだ昭和の写真 ベスト10」)をしっかりゲット。まさか、銀座の真ん中で、若き日に買いそびれた雑誌に巡り会えるとは思ってもみませんでした。

日本の粋を体現し、ファインアートの発信地でもあり続けた銀座のDNA を、明確な意思を持って継承し、あらゆる次元で展開してみせるGINZA SIX。しかし、安易な伝統への追従ではなく、現在進行形の情報を積極的にキャッチし、また自らも挑戦し続けていくところにこそ、クリエイティブな気概を感じます。日常の行動範囲にそんなスポットを持つことは、人生をより豊かにする秘訣の1つといえるのではないでしょうか。

Text:Akiko Tomita Photos:Hiroyuki Takahashi Edit:Yuka Okada

GINZA SIX EDITORS Vol.7(Lifestyle)

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富田 秋子

エディター/ライター。美術館勤務を経て、出版界へ。カルチャー誌で写真集やストリート・アート等々の特集を手がけ、独立。現在は国内で開催される国際写真祭や企業の文化メセナ事業に関わりながら、「VOGUE JAPAN」「Numero TOKYO」をはじめとしたメディアにアート関連の記事を寄稿している。
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

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2017.10.23 UP

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