
安井ちさと「In a Liminal place / かたちの途中の。」
銀座 蔦屋書店
Art
銀座 蔦屋書店は、銀座 蔦屋書店では2025年7月5日(土) ~ 7月25日(金)まで、安井ちさとの作品を展示いたします。
本展は、今年の春に開催されたCALM&PUNK GALLERYでの個展「Whereabouts -かたちの途中の。」の副題をそのままに、境界が曖昧で明確ではない、ファジーな感覚がどこか心地いい空間に広がります。
また高さ1.3メートルを超える大型の陶作品「Profile19」や、墨呉須を用いた連作「その中の余白 The marginal space」など色形豊かな作品が展示されます。
Photo/Tatsumi Okaguchi
『その中の余白 The marginal space』、2024、陶土、墨呉須
[作家より]
今回の個展「In a Liminal place / かたちの途中の。」では、2024年から2025年にかけて制作した近作を展示します。このタイトルは、実は今年3月から4月にCALM&PUNK GALLERYで開催された個展の副題として用いたものです。
“a Liminal place”とは、「限界領域」—はっきりと定義できない、複数の境界のあわいに存在する空間のことです。
そこには、「わからなさ」や「予測できなさ」、「空間的・時間的なあそび」が広がっています。
そうした場を、銀座 蔦屋書店のデザインギャラリー〈デルタ〉の空間に立ち上げることができたらおもしろい。そんな思いから、今回このタイトルをあらためて選びました。
私の作品は、陶磁を素材にしています。制作の手法は「ひもづくり」。皆さんもよくご存じの縄文土器と同じ作り方です。とてもシンプルで、何千年ものあいだほとんど変わらず受け継がれてきた技法でもあります。ひもづくりのイメージとして現代的なたとえを挙げるとすれば、それは3Dプリンターかもしれません。細長い素材を一層ずつ積み上げてかたちをつくる点では、構造がとてもよく似ています。
けれど私の制作には、最初に「つくりたいもの」や「目指すかたち」があるわけではありません。土に触れるその瞬間まで、自分でも何が現れてくるのかはわからないのです。
ただ、「土に触れたい」という衝動と、触れることで“何か”が立ち上がってくるという感覚。それだけを信じて、私は土に向かいます。
私の中には、おそらくまだ意識にも上っていないような「青地図」のようなものがあるのだと思います。
言語化も視覚化もできないけれど、たしかに“在る”と感じられるもの。
それが私の身体を通して土に伝わり、かたちとして現れてくる。
現れてきたかたちを自分の目で見ながら、「これは何か」「どこへ向かおうとしているのか」を土から受け取り、対話を重ねるようにして手を動かしていきます。
そうした目に見えない、深い層での一貫性を軸としながらも、その時々の私自身の感覚が、未知のイメージソースの通り道となります。
そのため、作品にはさまざまなかたちや、異なる表面の表情が自然と現れてくるのです。
そんなわけで、この展示に「In a Liminal place / かたちの途中の。」というタイトルをつけました。
私自身も、自分のことを、ひとつのかたちに留まることのない存在だと感じています。さまざまな人、もの、こと、場所に触れ日々移ろう存在です。
あるときどこかに身を寄せ、またあるときは抜け出して次の場所へと移る(そんな意味で、私は「やどかり」のようなものかもしれないと時々感じます)作品には、そんな私自身が映っている気がします。
そして「Liminal place」とは、常にその“あわい”に身を置きながら、自分でもまだ知らない場所へ向かっていく途中の状態なのかもしれません。
わからなさの中に、静かに佇むような時間。それがこの銀座 蔦屋書店で過ごす時間と重なるといいなと思っています。
Photo/Tatsumi Okaguchi
『A portal』、2024、745×455×345mm、50kg、陶土、墨呉須、顔料黒
[アーティストプロフィール]
安井ちさと Chisato Yasui
愛知県生まれ。茨城県在住。2010年 筑波大学大学院人間総合科学研究科博士前期課程芸術専攻デザイン領域(工芸専攻・陶磁領域)を修了。
近年の主だった展示として、2024年山梨県GASBON METABOLISMで開催された大規模個展「Whereabouts」、遡り2020年コロナ禍のはじまりと同時に、茨城県つくば市にて開催された個展、「わたしの在り処」。グループ展では2023年スイスのAIFA galleryで開催された木下玲子との二人展「Do you see it?」など。
受賞入選歴として、2023年イタリアで開催された「Grottaglie International Creamic Competition」でHonorable Mention Prize、同年ポルトガルで開催された「Aveiro Ceramic Biennale」でHonorable Mention Prizeを受賞。2024年、第13回国際陶磁器展美濃にて入選。
現在はスイスのギャラリーAIFAと共に2025年開催のCollect Art Fairなどヨーロッパのさまざまなアートフェアでも作品を発表している。
[展示詳細]
安井ちさと「In a Liminal place / かたちの途中の。」
会期:2025年7月5日(土) - 7月25日(金) ※終了日は変更になる場合があります。
時間:10:30 ~ 21:00 ※最終日は17:00まで
場所:銀座 蔦屋書店 インフォメーションカウンター前
主催:銀座 蔦屋書店
協力:ガスアズインターフェイス株式会社
お問い合わせ:03-3575-7755(営業時間内) / info.ginza@ccc.co.jp
2025.06.06 UP