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GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…
各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと
歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

Ginza and the New Normal

田島 朗

GINZA SIX EDITORS Vol.100

銀座に通うようになって23年経った。とはいっても(マガジンハウスは)三十間堀川の向こう、三原橋を渡った木挽町なんですけどね。45歳の自分にとって23年目の銀座は、つまり年齢の半分はこの街に通っているということで、なんだかやっと少しは「銀座は私にとって縁のある街です」って言っていいような気がしてるんだけどやっぱりまだ早いのかもしれない。マガジンハウスの中で『Hanako』はさらに銀座という街に関わりの深い雑誌で、32年間で実に80回近く、銀座特集を作っている。月刊化した今でも年2回ペースだ。だからHanakoに異動したことで銀座の街の方々とお知り合いになることができ、お祭りにも参加させてもらったり。そうか、やっぱり本当はもう少し大きな声で「銀座は俺の街です」って言えるかな、あーでもまだまだ言えないなあ。それほどに銀座は特別な、特別な街。

今回、この取材を受けるにあたって私が訪れたいと願ったのは、3軒のニューオープン店だった。銀座の一等地に店を出すというのは本当に特別なことだ。でも、彼らが思い描いていた銀座の姿はコロナ禍の今、ここにないかもしれない。かなり不安かもしれない。おい銀座大丈夫かよ、ってみなさん思っているはず。だからこそ、銀座で働き銀座の魅力を紹介し続けているひとりの編集者として、その3軒の方々とぜひお逢いして楽しく話をしてみたい、と思ったのだ。

1軒目に向かったのは、13Fの「熊本あか牛しゃぶしゃぶ 甲梅」。〝GINZA SIXの離れ〟こと13Fは素敵な店が揃うフロア。ここでは阿蘇で育ったあか牛「甲誠牛」でしゃぶしゃぶを食べさせてくれる。阿蘇は日本の中でも指折りの大好きな場所。あの雄大な自然の中で育ったあか牛を銀座で堪能できるとあって、期待が高まる。

本日頂くのは「凛」のコース(18,000円 ※以下全て税抜価格)。まず出てきたのは前菜四種。左上から時計回りに、ごどうふ、あか牛の煮込み、たぐり湯葉、あか牛の低温調理。

中でも佐賀の郷土食・ごどうふが滋味深い。豆乳と吉野の本葛を練り合わせた自家製の豆腐。「練り合わせるのが大変で。結構手間がかかってるんです」とは、女将の上田さん。

続いて出てきた肉寿司は、毎回使われる部位は変わるということだが今回はザブトン。マルドンの塩と炙りウニをパウダーにしたものをお好みで。さすが13Fだ!

そしていよいよ、しゃぶしゃぶの登場。今日のコースでは、三角バラ、タン、特上カルビ、ザブトン、リブロース、サーロイン、イチボ、ミスジが頂ける。お肉は注文が入ってからスライスしてくれる。

肉の前ではなぜニヤけるのだろう。昔、『BRUTUS』在籍時に肉特集を作った時に「うまい肉はソーシャルだ」という見出しを書いたなあ。肉の周りに人は集まる。「Meet around Meat」だと(いま振り返ると少し恥ずかしい)。女将と話がはずむはずむ。肉好きですものね、そうですよね。

そして何を隠そう(隠してないけど)私はごまだれ原理主義。ごまだれにはだいぶうるさい。正直、肉よりごまだれのほうが気になる。が、追って出てきたごまだれを見て驚愕することとなる。なんなんだこのごまだれは。映えるごまだれ!

団子状に出てきた自家製の練りごまを、自分の好みで崩しながらマイごまだれを作っていく。それにしても風味のなんと素晴らしいこと…。このごまだけをつまみに日本酒いける。いやいかせてもらいたい。

利尻産の昆布出汁に徳島の「しいたけ侍」を入れることで深い味わいを増した鍋で、弱火でゆっくりとしゃぶしゃぶ。沸騰させるのはご法度、旨みが逃げてしまうからだ。しゃぶしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶしゃぶ。ゆったり、たっぷり、のんびり。

阿蘇の話に銀座の話。女将の話も楽しく、すっかり腰を落ち着けてしまった。こんな状況でもあるので、今回のような使い勝手の良い個室があると近しい人とゆっくり食事ができるので、選択肢の幅も広がる。今度はプライベートで寄らせていただきますと再訪の約束をして、地下へ。

B2Fに降りて立ち寄ったのはイタリア・トリノ最古のカフェ「Bicerin(ビチェリン)」。1763年創業の伝説のカフェだ。イタリアの老舗カフェといえばミラノはモンテナポレオーネにある1817年創業の「Café Cova Milano(カフェ コヴァ ミラノ)」も有名だが、実はその2軒ともがGINZA SIXに入っているのだから恐れ入る。銀ブラもここに極まれり、か。

アフターしゃぶしゃぶのドルチェ気分でシグネチャードリンクのビチェリン(1,000円)を頼む。トリノの方言で〝小さなグラス〟を意味するこのチョコレートドリンク、ホットチョコレート・エスプレッソ・生クリームの美しい層を崩さずそのまま傾けて飲む。レシピも温度も厳格に決まっているとのことで、ヘミングウェイも愛したという。余談だがヘミングウェイと池波正太郎、伊丹十三リコメンドはおおよその男性編集者に対してはキラーワードだ。ふふふ。

粋に、ビチェリンをかき混ぜずひとり嗜んでいると、ふと、隣にキティちゃんが座っていることに気づく。うぬ、キティちゃん? なぜ???

実はこのキティちゃん、トリノに行った時にビチェリンの美味しさに感動し、現在修行中なんだとか。そして店内のソーシャルディスタンシングに協力すべく真ん中の席に座っているのだそうだ。キティちゃんとは同い年なんで親近感があるんだよなあ。男性誌気分から女性誌気分へ気持ちもすっかり逆戻り。キティちゃん、今度はコラボメニュー、頂いてみるね!

あっという間にそろそろ編集部に戻る時間、部員のみんなにお土産でも買って帰ろうと、やはりB2Fの「芭蕉堂(BASHODO)」を訪れてみる。こちらは明治元年、つまり1868年創業。お餅屋さんとして長らく商売を続け、80年ほど前からわらび餅の製造に取り組んでいる。

店の片隅には実演販売のスペースが。聞けば、今の社長が北海道から沖縄まで全国各地の百貨店で催事を行い、この実演販売で人気を博したのだとか。ぷにぷにのわらび餅に、抹茶をさらさらさら…、そしてさくっ、さくっとカットしていく。いや、ASMR的にはさくっ、じゃないな。でもとにかくわらび餅をカットする時のあの感じ、ぞくぞくする心地よいあの感じ!

…と気がついたら思わずかぶりつきで眺めてしまっていました。お店の方、すみません。ぷにぷにの秘密を聞けば、扱いが難しい銅釜で直火炊きにして作っていて、とにかく炊きたての柔らかい状態を食べてもらいたい、とのこと。

ショーウィンドウを眺めていたらこんな商品も。わらび餅を使ったぷるぷる(ぷにぷにとぷるぷるは違いますよね。日本語奥深い)の皮でこし餡や白餡のほか、ほうじ茶ラテ餡やマンゴー餡などを包んだ「わらび餅饅頭」(1個232円〜)。女性部員たちにウケがよさそう、こちらもわらび餅と一緒にいただきます。

寸外(ってホワイトボードに書いたら、これってどういう意味ですかと若いスタッフに言われました。おじさん用語なのかしら)のおみやげの割にはついいろいろと購入してしまう。まあ、わらび餅は飲み物ですから、若者たちよ。3時のおやつの時間には間に合うかな。

それにしても、毎日通っている街なので、GINZA SIXができた時の衝撃は覚えている。見た目がモニュメンタルでシンボリックな建物というのが銀座には和光しかないなあと個人的には思っていた中で、〝銀座ルール〟をわきまえながらもピカピカのニューカマーとして現れたGINZA SIX。1F部分に銀座らしい路面店の連続性を持たせたりだとか、フロア内部の通路のジグザクした路地を感じる部分だとか、銀座をリスペクトし銀座をアップデートする今までこの街になかった存在感の放ち方に、ああこれは銀座に長く遺っていくべくして建てられたのだなあ、と感じた。僕がおじいさんになる頃には、若い人にとって和光もGINZA SIXもフラットに、銀座に昔からあるカッコいい建物だよね、と感じる時代に、きっとなっているだろう。なっていてほしい。

そんな銀座の街から、人が減って久しい。ニューノーマルってなんだろう。商業施設も雑誌も、不要不急と杓子定規に言えばその通り。ノンエッシェンシャルな仕事だ。でも、ニューノーマルは絶えず上書きされていく。私たちの人生にはエンタテインメントが絶対に必要だから、それを信じて先行きの見えない時代の風を細やかに読みながら、じりじりと前に進んでいくしかない。

そしてこんなタイミングでGINZA SIXにやって来たこの3軒のことを心から応援したい。大都市の魅力が下がり地方の魅力が上がる、そんな言葉も耳にするが、銀座の魅力が下がることはないと感じている。それは、銀座がただ大都市だから魅力的なのではなく、街の規模にも関わらず店を営む人々の顔が、その振る舞いが見える稀有な街だからだ。あの料理が食べたい、あの空間に身を置きたい、あの人の顔が見たい。ただ貪欲に消費を楽しむだけではなく、心豊かな時間を過ごしたいから、私たちは街に身を置く。銀座はそんな街だし、GINZA SIXもこれからもそうあり続けて欲しいと願っている。

Text: Ro Tajima Photos: Yuichi Sugita Edit: Yuka Okada(81)
©1976, 2020 SANRIO CO., LTD. APPROVAL NO. L611995

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田島 朗

『Hanako』編集長。1974年生まれ、1997年マガジンハウス入社。1998年『BRUTUS』編集部に配属、2010年副編集長に。2016年『Hanako』編集長就任、大リニューアルを行う。現在は「働く女性の〝もっと知りたい〟を叶える知的ライフスタイルメディア」として、雑誌に留まらずデジタル・イベント・読者組織・商品開発など幅広いフィールドでHanakoブランドを展開している。
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

熊本あか牛しゃぶしゃぶ 甲梅

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Bicerin

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芭蕉堂

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2020.07.31 UP

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