GSIX

Instagram

GINZA SIX EDITORS

ファッション、ジュエリー&ウォッチ、ライフスタイル、ビューティ、フード…。各ジャンルに精通する個性豊かなエディターたちが、GINZA SIXをぶらぶらと歩いて見つけた楽しみ方を綴ります。

The Flavors of France: A Picnic at GINZA SIX

池田 浩明

以前、フランスに住んでいたことがあり、いまでも間欠的にフランスの味のものを食べたくなる。私がパンに目覚めたのは、フランスでパンを食べたことと大いに関係している。バゲットがうますぎて、いつのまにか1本(フランスのは日本より長くて60センチぐらいある)ひとりで食べ尽くしてしまったりするようなことがよくあったのだ。

そして今回、GINZA SIXのことを考えていたら、またフランスの味のものが食べたくなってきた。もちろんそんなこと藪から棒に思うわけではなくて、地下の「ル・ブーランジェ・ドゥ・モンジュ」でフランス産小麦粉を使ったパンを売っていることを知っているからなわけだが。

よーし、それなら、この「ぶらエディターズ」はフランスをテーマにしてみよう。

フランスの味がするものをパン中心にいろいろ買い集め、屋上でピクニックする。

と、食い意地の張った野望を抱き、GINZA SIXをぶらぶら。

まずピクニックに必要なクロスを買おうと立ち寄った「#0107 PLAZA(オトナプラザ)」で、マリメッコのテーブルクロス(1,800円 ※以下全て税別価格)を発見。パンにつきものの、かわいいカッティングボード(3,500円)も見つかった。

パンのお供になりそうな、ジャムや缶詰もたくさん売っている。中でも目が吸い寄せられた、ロッシーニのポルチーニペースト トリュフ入り(2,500円)。この贅沢オーラは、絶対うまいパターンだろうと即買い決定。

それにしても、#0107 PLAZAをぶらぶらすると、「あ、これかわいい」「これもかわいくない?」がたくさん見つかる。誰かの誕生日であることをFBの通知で思い出して急にプレゼントを買いに走ったりすることはままあるけれど、そんなときは#0107 PLAZAに走ればいいと心に留めておこう。

いよいよ食料品を買いにB2Fへ歩を進める。

「ル・ブーランジェ・ドゥ・モンジュ」では、にょきにょきと上に膨らんだパン・ド・ミ モンジュ(503円)という食パンにはかなり惹かれたけれど、本日のテーマ、フランス産小麦ではない。一番人気のバゲット・モンジュはフランス産小麦粉入り。試食をさせてもらうと、毎朝食べられる軽い食べ口に、まぎれもないフランスの味が滲んでいた。

でも、黒トリュフにはこれではないなーと思っていたところに、発見したポルカ(670円/ハーフ)。なまこ型で、一抱え以上あろうかというでっかさ。カンパーニュのようにルヴァン種を使って発酵させたフランス産小麦粉入りのパン。トリュフみたいな濃厚な香りのあるものにはもってこいだろう。トリュフペーストを塗って食べることを想像すると思わずよだれが出そうになった。

お隣りはブーランジュリー、ジャン・フランソワ。看板商品であるクロワッサンを派生させた商品も盛りだくさんの「ヴィエノワズリー ジャン・フランソワ」は、GINZA SIXのための新業態。

ちなみにジャン・フランソワが日本に初出店した当初から私が好きなのは、クロワッサン・フランソワ。リボン型に巻いた形もおしゃれだが、中でもフランス的なのはざくざくとした食感。日本のクロワッサンの層が薄く繊細であるのに比べ、このクロワッサンは一層が厚めにできているからだ。

名物となっているのが、Wチーズケーキデニッシュ(380円)。クロワッサン生地の上にかまくらよろしくチーズの白いドームがのっかっている。これはそそられるなー。

お気に入りのクロワッサン、そして焼きたてだったデニッシュフレンチトースト(340円)とともに購入。

続いて、世界各国のはちみつが置かれたはちみつ専門店「ラベイユ」へ。トリュフやコニャックといった食材のアロマを封じ込めたはちみつに、アカシアやそばといった植物別のはちみつ。ずらりと並ぶ圧巻の品揃えには、いつもどきどきわくわくさせられる。

今日はフランス縛りで物色。惜しげもなくテイスティングさせてもらえるのも魅力。フランスのはちみつを全種類試させてもらう。ローズマリーにはローズマリーの香りがあり、アカシアには日本のそれよりどっしりとして複雑な香りがある。

この日はフランス産のラベンダー(2,100円/125g)を購入。桜あんぱんや桜餅に使う桜の葉っぱに似た香りのあと、ラベンダーの香りが駆け抜ける。まるで食べるフレグランスだ。

その後、さらにフロアをぶらぶら歩いていると、フランスとは関係ないのに、「10FACTORY」に吸い寄せられた。愛媛の農家が、自ら生産したみかんの加工品を展開するお店。

クロワッサンにジャムをつける贅沢な食べ方が、いかにもフランス的で、無類に好きな私。ジャン・フランソワのクロワッサンに合わせるため、酸味も風味も強めという河内晩柑のジャム(843円)をチョイス。

ピクニックから脱線、店内で販売されるみかんジェラート(324円)にめちゃくちゃそそられ、その場で食べた。お店の方のおすすめで、特別にドライのみかんを上にトッピング。みかんの香りはまるでターボチャージャーをのせたスポーツカーみたいにぎゅいーんと加速。自分史上空前のひんやりみかん祭りがお口の中で開催された。これをブリオッシュにのせて食べたらどれだけおいしいだろう。いつか必ず実現しようと、心のTO DOリストにしっかり銘記。

最後に飲み物も必要だ。フランスならもちろんワイン。でも、昼間から顔を真っ赤にするのも困るなーと思っていたら、「ワインショップ・エノテカ」においしそうなぶどうジュースを売っているではないか!

フランスの生産者でワイン用ぶどうを使ったアラン・ミリアの逸品。常駐するソムリエの説明を受けながら、琥珀色をしたうつくしいシャルドネに、いかにも重厚な色あいのメルローを購入(ともに800円)。

地下からエレベーターに乗って一気に屋上に上がると、広々とした空が待っていた。

銀座のまんなかでピクニック。クロスを広げて、その上に戦利品を並べて。

乾いた喉にぶどうジュースぐびり。甘さ、ひんやりした液体の喉越し、あふれるように広がって口から鼻へと駆け上がるぶどう。香りだけでフランスに連れていってくれるなー。

瓶を開いただけで、暴力的なほどにトリュフ、トリュフ、トリュフ。矢も楯もたまらず、ペーストをポルカに塗りつけて、がぶり。トリュフだけではない。ポルチーニの香り、アンチョビなどの旨味の恐るべき濃厚さ。それと対峙するフランス産小麦のミネラリーな味わいの懐深さ。それにしても、トリュフの香りはあまりに濃厚で、いつまでも鼻のあたりにまとわりついて離れない。

ばりばりという音を立ててクロワッサンを噛み破る快感。さきっちょのいちばんばりばりしているところに、みかんジャムを塗りつけて、明るい甘さのニュアンスは、フランスのそれとは少し異なるけれど、ピールの香りの地響きはクロワッサンのバター感と合ってくれていた。

フレンチトースト、これははちみつと合わせようと買っていたのだよ。はちみつをすくいあげ、甘い液がおいしそうに染みた黄色い表面へたらり。垂れないように口で迎えにいって、ぱくり。ふにゃりとしてミルクや卵の風味が広がると、また別のフランスの記憶が起動した。パリのはちみつ専門店で買った、ラベンダーのはちみつをたっぷり使ったパン・デピスだ。

Wチーズケーキデニッシュを頬張りながら、ひとりほくそ笑む。銀座でピクニック、成功、成功。

焼きたてのパンを買って、うちまで大事に持って帰るなんて、食い意地の張った私にはむずかしい。ピクニックなら、友人と分け合って、いろんなパンを試すことができる。フレンチトーストはあつあつのうちに、要冷蔵のWチーズケーキデニッシュだって、すぐ食べられるからまったく問題なし。

改めて思う。パンのおもしろさって出会いなんだな、って。パンだけではちょっとさびしい。ジャムやペーストやはちみつやジュース。いろんなものを出会わせて、自分でカスタマイズできる。そこに新しいおいしさが生まれる。

でも、自分ひとりでは、どれにしようか迷う。そういえば、今日訪ねたお店には、どこでもスタッフさんたちに的確な意見をもらえた。自分の言葉を持った、その道のプロフェッショナルがいるのが、GINZA SIXの心強さだなと思った次第である。

Text:Hiroaki Ikeda Photos:Shizuka Suzuki Edit:Yuka Okada

GINZA SIX EDITORS Vol.39

editors_ikeda

池田 浩明

パンラボ主宰、ブレッドギーク(パンおたく)。NPO法人新麦コレクション理事長。日本中のパンを食べ歩き、パン職人や小麦農家の声に耳をかたむける日々。近著『日本全国 このパンがすごい!』(朝日新聞出版)、『パンの漫画2さすらいのクロックムッシュ氏』(ガイドワークス、堀道広と共著)、『空想サンドウィッチュリー』(同、西山逸成と共著)『パンソロジー』(平凡社)。連載に雑誌『Hanako』での「町をつなげるパン屋さん」、朝日新聞デジタル&Wでの「このパンがすごい!」http://www.asahi.com/and_w/konopan_list.html など。twitter→@panlabo
Instagram GINZASIX_OFFICIALにて配信中

オトナプラザ

店舗情報はこちら

ル・ブーランジェ・ドゥ・モンジュ

店舗情報はこちら

ヴィエノワズリー ジャンフランソワ

店舗情報はこちら

ラベイユ

店舗情報はこちら

10FACTORY

店舗情報はこちら

ワインッショップ・エノテカ

店舗情報はこちら

2018.05.03 UP

RELATED ARTICLES

Back To All