フランス語で「食前酒」を意味するアペリティフ、略してアペロ。イタリア語でアペリティーボとも。ディナーの前に、軽くお酒とおつまみを楽しむ時間のことで、ラテン文化の人々が愛する食習慣です。
〈GINZA SIX〉にはこの“アペロ使い”ができる店が充実していることをご存知でしょうか? B2Fにはワインや日本酒、ウイスキーの専門店があり、ウェイティングバーとして最高のカウンターエリアや角打ちスペースなどが併設されています。時には超レアなボトルも開けられ、お酒に合わせた一流のグラスや酒器でいただけるのも銀座クオリティ。
そして特別なディナーにふさわしい、天ぷらやお寿司、鰻、中華、ビストロ、イタリアンといった名店が揃っています。だからこそ、この環境を活かして〈GINZA SIX〉をもっと“ハシゴ”して欲しいのです。
今回は母の日&父の日シーズンに向けて「アペロ&ディナー」のストーリーをご紹介。ご両親のお好みのコースをコーディネートして、思い出に残る1日を贈りましょう。今年は早めに待ち合わせをして、格別の乾杯を!
*営業時間やご予約は、直接店舗へお問い合わせください。
*金額は税込の価格です。
*2023年4月28日(金)時点の情報です。
INDEX
母娘でワインショップのバーへ!そして滋味深い中華で夢の時間を。
WINE SHOP ENOTECA → 家寳 跳龍門
APEROWINE SHOP ENOTECA (B2F)
ワイン好きの母にロゼを贈り、
バーで感謝を込めて乾杯!
ワイン好きな母ならば、ぜひ待ち合わせに使いたいのがB2Fの奥に広がる〈ワインショップ・エノテカ〉。全国で60店舗以上、海外にも支店を持つワインショップで、店内は450m2以上と国内最大級の広さ。フランスの銘醸地ブルゴーニュの名門ドメーヌをはじめ、ファインワインから日常的なカジュアルワインまで1,600種以上を揃える。
エントランスから店へと続くアプローチにはピカソやアンディ・ウォーホルなどアーティストが手がけた「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」のラベルのリトグラフが展示され、ワイン・ミュージアムの一面も。ちなみにフランスのシャトー以外でこのリトグラフが見られるのは、世界でここだけ。
母とワイン談義をしながら、まずはギフト選びを。店の奥にはウォークインセラー「ワイン ライブラリー」があり、錚々たるバックヴィンテージたちが眠る景色は壮観だ。ここで思い切って美術品級のヴィンテージワインを贈るのも、銀座らしい夢のあるお話だ。
もう少し手の届く価格帯なら、「ちょうど飲み頃ですし、娘さんが描いた鳥のラベルもかわいいですよ」と店長の梶田浩司さんが薦めてくださった「バローロ リゼルヴァ」の最上級キュヴェ「バローロ ラヴェーラ ヴィーニャ エレナ2015」はいかが? または圧倒的コレクション数を誇るロゼから選んでみるのもいい。梶田さんお薦めの一つ、トスカーナの「サンタ・クリスティーナ ジャルディーノ・ロゼ」は、ボトル2,000円台というカジュアル価格帯で、母と2人、休日の午後飲みにぴったりだ。
ワイングッズも充実しており、憧れの〈ラギオール〉のソムリエナイフやワイングラスの最高峰〈ロブマイヤー〉の「バレリーナ」シリーズを贈るのも素敵かも。
さて、ギフト選びのミッションが終わったら、 バーエリアでお待ちかねのアペロを! 〈GINZA SIX〉に来たことがあるなら既にご存知だろうが、アプローチのエリアにボックスシートなどを設えたバーが併設されており、ここがアペロに最高なのだ。
同店で扱うスパークリング、白、ロゼ、赤が常時18種ほど、バイザグラス660円から提供されていて、なんともリーズナブル。グラン・クリュ(特級)のボトルも開けられ、価格はグラス2,000円台まで。またお店で購入したボトルも抜栓料1,100円で楽しむことができる。
本日は、南アフリカ発のコスパ大なスパークリング「レオパーズ・リープ・キュヴェ・ブリュット」(グラス ¥660)と、母には「シャンパーニュ・バロン・ド・ロスチャイルド」のロゼ(グラス ¥2,200)をプレゼントして、2人で乾杯!
ちなみにシャンパーニュはハンドメイドのシャンパングラスで出してくれるのも専門店ならでは。こうした心遣いの一つひとつが、母へのおもてなしに繋がるのだ。
WINE SHOP ENOTECA(B2F)
電話番号:03-6263-9802
DINNER家寳 跳⿓⾨(6F)
滋味に満ちた広東料理の一品で、
母への日頃の感謝と健康を祝う
母との今宵のディナーに選んだのは、広東料理の名店〈家寳 跳龍門〉。香港の歴史ある一流広東料理店の日本支店で長く総料理長を務めた袁 家寳(えん かぽ)さんが開いた店だ。広東料理の真髄であるアワビやフカヒレといった高級乾物素材を使った一品をはじめ、点心師による繊細な手仕事の飲茶などが楽しめる。
まず、母を喜ばせるポイントが、素材を選び抜き、化学調味料を極力使わない健やかな味わいと、店内のエレガントな雰囲気。中国料理店では珍しい、〈大倉陶園〉の代名詞「ブルーローズ」シリーズの料理皿が使われていることも、食器好きの母ならきっと心ときめくはず…!
そして何より味わってほしいのが、店の上湯(シャンタン)の美味しさ。上湯とは広東料理の味の要となるもので、金華ハムと丸鶏、豚肉、牛スネ肉などを煮込んで作るスープのこと。
家寳さんから絶大なる信頼を得てこの春より新料理長に就任した鈴木健太郎シェフも、「スープはもちろんソースや炒め物の味付けなどあらゆる料理に使われる、まさに“店の命”です」と語る存在。金華ハムと丸鶏、黒豚の赤身肉で作る〈家寳 跳龍門〉の上湯は芳醇で滋味深く、清らかに澄んでいて、すーっと身体に染み込んでいく。この味をぜひ母娘2人で堪能してほしいのだ。
今日はせっかくなので、店のスペシャリテが詰まった看板の「家寳コース」を。前菜の「上湯ジュレ フカヒレとキャビアを添えて」は、まさに上湯の美味しさを頬張るスペシャリテ。フカヒレの食感とともに、ジュレの中から上湯の澄んだ旨みが花開く。ブルーローズの皿で艶やかに登場する「干し鮑 オイスターソース煮」は、広東料理の真骨頂。アワビの柔らかな噛み心地にしばし陶然となる。
中国茶もユニークな茶葉が揃っているので、ぜひオーダーを。見た目も美しい「菊花普洱茶(キッカプーアールチャ)」(¥2,300)は、熟成していない生プーアール茶のほのかな苦味と菊花の香りが、口中をさっぱりとリフレッシュしてくれる。
「駿河湾産の伊勢海老の蒸し物」、「A5和牛のステーキ」という華麗なるメイン料理には、紹興酒のコレクションの中から「夏之酒 2018年冬醸造」を合わせて。無農薬栽培の在来種のもち米だけを使い、伝統的製法で作られたカラメルフリーの紹興酒。カラメルを添加していない紹興酒は甘すぎずクリアで、スルスルと飲めてしまう。中華に合うワインや蒸留酒も豊富に揃えているのがこの店の懐の深いところだ。
デザートの甜点心まで堂々の全10品。味わいも接客も、エレガントで洗練された広東料理は、きっと母娘のスペシャルな思い出になる。
息子と父で最高の“角打ち”と最高の天然まぐろを堪能する。
いまでや銀座 → つきじ鈴富
APEROいまでや銀座(B2F)
日本の注目の銘酒を美しい酒器で
最強にして最高の「角打ち」!
蔵元や作り手と繋がり、一本一本が持つストーリーを飲み手に伝える〈いまでや銀座〉。蔵元とのネットワークや信頼関係により、超小ロット、超希少な銘柄が入荷する実力派の酒販店だ。
この店の一角にある立ち飲みエリアが、ハイレベルな「角打ち」なことをご存知だろうか? 日本酒好きの父ならば、待ち合わせにこれ以上の場所はないのだ。
この角打ち、日本酒だけでなく日本ワイン、海外ワイン、そして最近話題の「クラフト酒」のカテゴリーで常に20種以上のボトルが開いており、1杯800円、2杯1,500円、3杯2,200円という明朗会計。ラインナップは週替わりなので、常に新たな一本に出会える。
「まさに、この角打ちはアペロとして使っていただきたい場所。皆さんにこんなに面白いお酒があることを知ってほしくて、どんどん開けてしまうんですよ」と店長の片岡昌弘さん。なんと嬉しいお言葉。国内のクラフトジンも豊富に揃え、入手困難な「アルケミエ辰巳蒸留所」のシリーズを角打ちでそっと提供しているのも、そんな思いからだ。
片岡さんが「この季節、キリッと冷やして飲むとアペロに最高ですよ」と薦めてくれたのが、日本酒のスパークリング。「真澄 スパークリング」や「醍醐の泡」、「雁木 純米発泡スパークリング」は、どれもボトル2,000円台なので気軽なギフトにもなる。これを〈菅原工芸硝子〉が開発した日本酒の泡専用のグラスで飲ませてくれるのが心憎い。店内では〈菅原工芸硝子〉をはじめ〈中井窯〉や〈能作〉、作家の一点ものなどの酒器が販売され、角打ちでも試すことができるのだ。
ワインは〈IMADEYA GINZA〉のロゴが入った〈木村硝子〉の名作グラス「ピッコロ」を基本に、個性に合わせて〈ジャンシス・ロビンソン〉など海外ブランドのワイングラスでも出してくれる。的確に温度管理されたお酒を的確な酒器でいただける…まるでバーに来たようなクオリティではないですか!
新世代の日本酒のほか、日本の注目ワイナリーの貴重なボトルが入るのも〈いまでや銀座〉だからこそ。〈Kisvinワイナリー〉のシャルドネや〈カーヴドッチ〉の「FUNPY」のロゼスパークリングなど、見逃せない作り手の一本は、父へのギフトにも喜んでもらえるはずだ。
それにしても、気になるものばかりであれこれ試したくなるのが悩ましいところ。アペロを忘れて本気の飲みモードになるのをグッとこらえ、いざ、ディナーへ。楽し過ぎて飲みすぎにはご注意を!
いまでや銀座 (B2F)
電話番号:03-6264-5537
DINNERつきじ鈴富(13F)
まぐろ仲卸直営の江戸前寿司で、
格別のおまかせコースを味わう。
スパークリングの日本酒ですっかり気分もリラックスし、〈つきじ鈴富〉へ。「江戸前寿司のカウンターで、おまかせをいただく」のは息子にとっても晴れがましい席。息子から父へ、日頃の感謝の気持ちを伝えるのにふさわしい場所だ。
〈つきじ鈴富〉は、豊洲のマグロ専門仲卸〈鈴富〉が手がける江戸前寿司店。まぐろは当然のこと、豊洲で仕入れる良質な旬の魚介が自慢。もちろん、その目利きは確かだ。
飛騨高山の家具工房による無垢材のハイチェアが並ぶ、L字型の檜カウンターは、さながら料理人の舞台のようだ。カウンターは8席。父と2人、板前の仕事ぶりが目の前で眺められる特等席を予約。整然と素材が並べられたネタ箱やマグロのみごとなサクを見ていると、自ずと期待が高まってくる。
ハレの日の本日は、少しフンパツして「板前おまかせ」のコースを。先付、椀盛、3種のお造り、焼物、中八寸、煮物、蒸物と8貫の握りで構成された会席仕立て。寿司と和食、2人の板前の仕事が堪能できるフルコースだ。
椀盛の「あいなめの葛叩き 鍵わらび添え」や焼物の「太刀魚の木の芽焼き」など、初夏の美しい皿たちに目を奪われる。
仲卸の力量を体感できる3種のお造りは、本日はまぐろの中トロに平目、つぶ貝。日本酒も常時10種類以上用意されているので、料理にぜひ合わせたい。この日は新潟の「鶴齢」純米吟醸がみごとな伴走をしてくれた。
さて、いよいよ真骨頂の握りへ。本日はノドグロ、赤貝、コハダ、ウニ、車海老、白身(この日は鯛)、銚子産の本マグロの赤身と大トロの8貫。ヅケにした赤身のとろけるような甘みにため息が漏れる。「中トロ、もう一貫お代わりする?」なんて父と話しながら、幸せな宴も終盤へ。
奥には板前が目の前で握ってくれるカウンター付きの個室もあるので、家族で集まる時はそちらもいい。次回はぜひ、母も連れて再訪したい。
ブドウとコーヒー豆、2つの果実を父とともに心ゆくまで味わう。
GRAND CRU CAFÉ GINZA → ビストロ オザミ
APEROGRAND CRU CAFÉ GINZA(13F)
まるで極上のワインのような
珠玉のコーヒーをいただく
毎朝ミルで豆を挽き、ハンドドリップを日課とするコーヒー好きの父を、ぜひ連れて行きたい店がある。それが13Fでもひときわラグジュアリーな空気を放つ〈GRAND CRU CAFÉ GINZA〉。スタイリッシュなバーかと思いきや、実はコーヒーの専門店。「コーヒーハンター」の名で知られるJosé.川島良彰氏が創業したコーヒーブランド〈MI CAFETO(ミカフェート)〉の中でも、最高峰のコーヒー豆のみを扱う旗艦店だ。
〈Grand Cru Café〉とは農園、畑、樹の選別、完熟豆のみの収穫、昔ながらの精選技術や天日乾燥、ハンドソーティング、そして輸送方法や脱酸素定温保管、包装形態まで、全ての行程に厳格な品質基準を設け、厳選されたコーヒー豆だけに冠するブランドのこと。
そうした最高峰のコーヒー豆は焙煎後すぐに窒素置換したボトルで加圧包装し、適切な温度で管理されたセラーに保管。その姿はシャンパンそのものだ。
基本的にこのお店は〈ミカフェート〉のコーヒーセラーオーナーのために用意された空間だが、100g入りボトルはビジターでも1本単位で購入が可能。店舗で開栓後、2週間ボトルキープができ、約5杯分味わえる。ボトルは実に1本11,000円〜。
コーヒー好きの父への贈り物としてボトルを購入し、一緒に味わうというプラン。アルコールならずとも、これも最高の“アペロ”だ。
「シェリー酒の風味が感じられるコーヒーなので食前酒代わりにぴったりですよ」とマネジャーの佐藤亮さんにアドバイスをいただいた「ナチュール カフェ」シリーズから、「パナマ コトワ農園 ワイニー ナチュラル 2017」を。ワイニー、つまりワインプロセスは樹上で過熟状態になってから収穫したコーヒーチェリーを特別な乾燥工程を経て仕上げた豆なのだそう。
佐藤さんはハンドドリップで丁寧に抽出し、一杯はホットで、一杯は氷で急冷しアイスに仕上げてくれた。器のコレクションも素晴らしく、ホットは金彩が美しい〈オールドノリタケ〉の希少なカップ&ソーサーで。アイスはバカラのワイングラスで出すという心憎さ。
「パナマ コトワ農園 ワイニー ナチュラル 2017」は、熟成したシェリーや洋菓子のサヴァランのようなニュアンスに干しぶどうのような熟した香りを持ち、芳醇かつ濁りのない後味が体に染み入るよう。ホットとアイスで香りの広がりや味わいの趣が異なるのもまた面白い。
極上のワインやカクテルを飲んだ感覚にも似た至福感。残りの豆は持ち帰れるので、父へプレゼントするのもいい。もちろんセラーで2週間、ボトルをキープしてもらえば、2人でまた飲みに来る楽しみになる。
GRAND CRU CAFÉ GINZA(13F)
電話番号:03-6274-6841
DINNERビストロ オザミ(6F)
ギンガムチェックのクロスで
パリの粋なビストロのように過ごす
最高峰のコーヒーを堪能した後は、ウマいワインを目指して〈ビストロ オザミ〉へ。
パリの伝統的なビストロ料理とワインを供する人気店で、ダークブラウンを基調にした店内、赤いギンガムチェックのクロス、トーネットのチェアなど、パリの街角に佇む店そのもののような空気感がなんとも素敵だ。トラディショナルなものを愛する父も、きっとこの雰囲気を一目で気に入るはず。
料理は代表的コースである「プリフィックスコース」(¥6,380)を。前菜2品、スープ、主菜1品、デザート、コーヒーという構成で、一皿ごとにボリュームがあるので食べ応え充分だ。
料理とともに父と楽しみたいのは、もちろんワイン。銀座を中心に現在11店舗を展開する〈オザミ ワールド〉グループでは、約2万本のストックを持ち、その中から常に飲み頃のワインが提供されている。バイザグラスが豊富で、常に泡2、白6、赤8ほどのボトルが開いており、気になる銘柄をグラスで気軽に試せるのが嬉しいのだ。
たとえば目にも美しい前菜「オマール海老と彩り野菜のテリーヌ」には、甲殻類にも合う「シャブリ」を。シャブリの名門ジャン・コレの「シャブリ・1er・クリュ・モンテ・ド・トネール2019」は濃厚な香りと厚みのあるシャルドネで、王道のビストロらしい洒落たスタートだ。
1997年に1号店をオープンした〈オザミ〉は、創業当時からナチュラルワインを紹介していたことでも知られる店。だからこの機会に、父にナチュラルワインの魅力を教えたい。まずは「前菜からメインまで万能ですよ」と店長の藤川友哉さんが薦めてくれたアルザスのオレンジワイン「オランジュ・イン・アルザス 2020」をボトルで注文。柑橘とフラワリーな香り、軽めのタンニンが実に軽快で、メインの「豊洲直送の鮮魚のポワレ(この日はサワラ)」とも相性抜群だ。
看板料理の「山形牛100% スペシャルジューシーハンバーグ」をオーダーした父には、子ぐまのエチケットがかわいいローヌの赤「プチ・ウルス・ブラウン 2021」を。カシスや木苺の風味が広がるきめ細かなシラーで、黒胡椒のスパイシーなニュアンスもあり、フォンドボーの赤ワインソースともばっちり。「このオレンジならデザートにも合うね」なんて父と語り合うのも楽しいものだ。
しっかりと骨格のある伝統的なビストロ料理と芳醇なフランスワイン、そして気さくできめ細やかなサーブ。父と息子で気取らず気負わず、お酒を酌み交わしたい。そんなお祝いの場に〈ビストロ オザミ〉はふさわしい。話が弾んでついつい飲み過ぎても、ナチュラルワインなので翌朝の目覚めもスッキリ、だ。
お義母さんに贈りたい、お茶カクテルとカウンターでの天ぷらディナー。
MIXOLOGY SALON → てんぷら山の上 Ginza
APEROMIXOLOGY SALON (13F)
香り高いティーカクテルでお祝いを。
着物姿で訪れたくなる隠れ家バー。
たとえば夫のお母さんへ日頃の感謝を伝えるなら、「バーで待ち合わせて天ぷらのお店へ」というコースはいかがだろう。ディナーの前にバー? と意外に聞こえるかもしれないけれど、13Fの〈MIXOLOGY SALON〉は、ミクソロジストの南雲主于三(なぐも しゅうぞう)さんが手がけるお茶をテーマにしたバー。ミクソロジーとは蒸留機や遠心分離機、真空調理機などを駆使して自然素材から香りや成分を抽出し、アルコールと組み合わせて作る新たなカクテルのスタイル。中でもこちらは日本のお茶に特化し、全国の優れた作り手の茶葉を使ったオリジナルカクテルが楽しめるのだ。“ジャパニーズティー”のカクテルに惹かれ、11時のオープン直後からカウンターをメインとする8席の店内は海外客でほぼ満席の人気…! スムーズにお義母さんをエスコートするなら、ぜひ予約を。
お茶のカクテルはコースメニューもあるけれど、本日は「アペロ」使いなので一品ずつのオーダーに。全国の30〜40もの茶園や作り手と直接やりとりし、納得した品質のものだけを扱うという茶葉のクオリティはかなりのもの。
瑞々しい若葉色の「煎茶ジントニック」は、静岡の〈TeaRoom〉のやぶきたと佐賀は嬉野の〈永尾豊裕園〉のおくゆたかという2種の煎茶をブレンドした爽やかな一杯で、〈木村硝子〉のグラスの口当たりも軽やか。「焙じティーテイルNO.2」は、静岡は牧之原のやぶきたのほうじ茶に、ドイツ産アプリコットリキュールと30年熟成のスペイン産シェリーを合わせたふくよかな味わいだ。
「通常のカクテルが油絵ならば、お茶という繊細な風味を活かしたカクテルは水彩画を描くイメージでお作りしています」と店長の箕浦真さん。その言葉通り、アルコール度数が軽めなメニューが多いのも食前にぴったりだ。
もし茶道を嗜むお義母さんであれば、抹茶茶碗で供する「温い抹茶のカクテル」をどうぞ。京都の「さみどり」の抹茶に「白州」とアマレット、黒蜜で整えた味わいにほっと和む。
白衣姿のバーテンダー、箕浦さんの洗練された所作も、まるで茶席のお点前を眺めるよう。茶室からインスパイアされたモノトーンの空間は、お義母さんと2人、着物姿で訪れても映えるはず。
DINNERてんぷら山の上 Ginza(13F)
多くの文化人が愛する〈山の上〉の
江戸前天ぷらを、銀座でいただく。
お茶の香りのカクテルで気分が華やいだら、同じ13Fの〈てんぷら山の上 Ginza〉へ。1954年創業、神田駿河台の老舗〈山の上ホテル〉の代名詞的存在であり、軽やかな薄衣で旬の素材を包む天ぷらが特徴だ。
店内は数寄屋造りの意匠を施した端正な佇まいで、樹齢約250年という檜の一枚板のカウンターと、壁面に作られた氷の冷蔵庫の眺めが圧巻。飛騨の工房による座り心地のいい無垢材のチェアも、お義母さんを安心して招ける一要素だ。
「氷で冷やす昔ながらの冷蔵庫は、適温で冷えるだけでなく、素材の乾燥を防いだり、脱臭の働きもあるんですよ」と料理長の島貫茂さん。カウンター席は、職人さんと交わす会話も楽しみだ。
黄金色に澄んだ油にネタを泳がせ、サーッと油の弾ける繊細な音が聞こえてくると、名店に来たと改めて実感する。
魚介もお野菜も大好きなお義母さんのために、本日は「椿」季節のおまかせのコースを。小鉢に始まり、今の季節は熊本県天草産が多いという活車海老、魚介(この日はキス)、丸々としたアスパラなど初夏の野菜へと続く。天つゆのほか、島貫料理長曰く「ミネラル感が合うから」と、沖縄・粟国島産の海塩も添えられる。
店内を見渡せば、天ぷらに合う日本酒やワインが眠るセラーや、美しい酒器のコレクションが目に入る。本日はせっかくなので期間限定で提供中だという〈久野九平治本店〉の「黒田庄 福地 2020年」を開けることに。〈久野九平治本店〉は、ワインでいうなら村(ヴィラージュ)ごとに造る日本酒のシリーズで、こちらは兵庫県黒田庄エリアの「福地」地区の山田錦100%で作られたもの。ワイングラスでいただくと、フレッシュな白桃の香りと柔らかな酸味が広がって、天ぷらとの相性も抜群だ。
そして、ぜひお義母さんに食べて欲しいのがお店自慢のかき揚げ。天丼、天茶、天ばらの3種から選べて、どれにしようか心惑わせるのも幸せな時間。店に受け継がれるぬか床で漬けた自家製ぬか漬けにシジミの赤出し、最後の自家製シャーベットで大満足の終焉を迎える。
カウンター席で天ぷらをいただき、お義母さんをもてなす。一人前の大人になれたようで、なんだか誇らしい気持ちに浸れるのだ。
蒸留酒を愛するお義父さんと訪ねたい国産ウイスキーと江戸前鰻の夜。
J.W.C LIBRARY → 日本橋 鰻 伊勢定 〜蓮〜
APEROJ.W.C LIBRARY (B2F)
ウイスキー専門店のカウンターは
ハイボールが最高のアペロになる
ウイスキーを愛する義父をぜひ連れていきたいのが、今年3月に誕生した「J.W.C LIBRARY」。以前から営業していた「Jule’s Whisky Collection」のお隣に旗艦店としてオープンし、テイスティングコーナーも広くゆったりとしたスペースになった。今や入手困難になっている「山崎」を始め、国内の蒸留所から集めた貴重なコレクションを誇り、このジャパニーズウイスキーを目指して海外観光客が銀座にやってくるという “熱い”ショップなのだ。
壁には「山崎」の貴重なヴィンテージから「白州」「響」といったサントリーの銘柄をはじめ、「竹鶴」「余市」「イチローズモルト」など、ノンヴィンテージのボトル5,000円台から果ては数百万円台、さらに頂点は2007年に50本だけリリースされた「山崎 50年」の8,800万円(!)まで、まさにライブラリーのごとくディスプレイされ、時間を忘れて眺めていられそうだ。
さて、義父を誘っていよいよテイスティングコーナーへ。広々としたカウンターに7席が用意され、気になる銘柄を少しずつテイスティングできる。
シングル15ml、ダブル30mlが基本で、ウイスキーファンたるもの、まずはストレートでゆっくりと味わいたい。
たとえばサントリーウイスキーのシリーズなら、「山崎」のノンヴィンテージが15ml 500円で楽しめ、価格が高騰している「18年」は15mlで4,000円。ほかに「竹鶴」や「余市」のヴィンテージ違い、さらに〈厚岸蒸留所〉の入手困難な「厚岸」シリーズなども揃え、高価なもの&希少なものもトライできるのが有難い。そのアイテム数は実に70種類以上。圧巻のメニュー数だ。
このテイスティング、お好みでロックやソーダ割り(+200円)も可能で、この少量のハイボールがアペロにちょうどいい。
「なかなか手の届かない価格のヴィンテージも味見ができるのがテイスティングバーの良さ。個人的にはソーダ割りに〈キリンウイスキー〉の「富士山麓」なんておすすめですよ」と店長の岩田なつみさん。
アドバイスに従って「富士山麓」のハイボールをオーダー。格別のハイボールを少しずつ、数杯飲み比べるのが、食前酒に最高だ。
たとえば義父へのギフトなら、「余市」の蒸留所限定ミニボトル3点セットを。ソーダ割りの美味しさに目覚めた「富士山麓」は自分用のお土産に。今後、ますますウイスキー談義が盛り上がりそうだ。
J.W.C LIBRARY(B2F)
電話番号:03-6263-9968
DINNER日本橋 鰻 伊勢定 〜蓮〜 (13F)
端正な酒肴と江戸前の鰻で
義父と日本酒を酌み交わす
昭和21(1946)年、日本橋に創業し、70余年の歴史を刻む鰻専門店。店内に入ってまず目を奪われるのが、桜の一枚板を使ったみごとなカウンター。木目の表情の美しさに見惚れながら、義父とともにカウンターの席に着く。
料理長の和やかな対応にホッとしつつ、本日は「会席 常盤」を注文。酒肴やお造り、鰻の白焼きなど全6品の料理と、鰻重、水菓子という充実のフルコースだ。
酒肴のノドクロは鰻の火入れに使う備長炭で焼き上げ、香ばしくふっくら。初夏らしい清々しい盛り付けで供される酒盗豆腐や鯛わたなど、まさに酒を呼ぶ心憎い一品が続く。
「お酒はいかがなさいます?」と着物姿の店長さんに微笑まれ、ここはやはり日本酒を。先ほどの国産ウイスキーのハイボールから、とてもいい流れだ。
お酒は飲み比べに好都合な150mlのミニボトルが揃っているのが面白い。これは日本酒を自分で口開け(開栓)したいお客様が多く、そのリクエストに応えて置くようになったとか。日本酒を小瓶で嗜むのも、いかにも鰻屋での正しい所作のようでワクワクする。
滋賀〈喜多酒造〉の「喜多長」純米大吟醸を合わせながら、天然マグロと白身(この日は和歌山の真鯛)のお造り、そして強肴のみごとな半尾の白焼きへ。フカヒレと黄ニラの煮物、留肴のうざくと、手をかけた端正な料理の数々に、酒肴好きの義父も満足げだ。
いよいよ本日の主役、注文を受けてから裂き、蒸し、焼きあげる江戸前の鰻重が到着。ふっくらと、かつ身のしまった三重県産鰻に丸大豆醤油と国産みりんで仕込む秘伝のタレを艶やかに纏っている。その姿がなんとも品がいい。清らかに透き通った肝吸いの、お出汁の深い味わいも体に染み込むようだ。
「タレを纏わせる、この塩梅が長年の技と言えるかもしれません」と料理長の老川喜三さん。粒の立ったご飯は、鰻の味に負けない力強さと粘りのある長野県産こしひかり。タレとの絡み具合も素晴らしい。〆の水菓子も、季節の果物を桜の葉の水晶がけ(本葛あんかけ)にする一手間が。それにしても料理長や着物姿のスタッフの、誠実な接客ぶりがなんと心地よいことか。こんなお店なら安心して大切な人を招くことができる。
何より、そば前ならぬ“鰻重前”の一品料理で、義父とゆっくり酒を酌み交わす時間こそ、宝物だと思うのだ。
アペロからディナーまでこの1軒で!3世代ファミリーで楽しみ尽くす。
EATALY "LA PIAZZETTA" → "LA GRIGLIA"
APEROEATALY "LA PIAZZETTA" (6F)
まずはカジュアルにバールエリアで
イタリア流のアペロールから!
イタリア・トリノ発祥のイタリアンレストラン&マーケットプレイス〈EATALY GINZA店〉は、バールやピッツァも食べられるレストラン、イタリアングリルのレストラン、さらにカフェや直輸入の食材を主に扱うマーケットまで、ずらりとワンフロアに集結した国内最大規模の日本旗艦店。コーヒーにお酒、食事にお買い物まで終日楽しめてしまうアメイジングな場所であり、ファミリーユースもウェルカムだ。
だから、本日はアペロ(イタリアではアペリティーボ)もディナーも〈EATALY〉をフル活用。中央のバーカウンターが存在感を放つ〈LA PIAZZETTA〉は、グラスワインやカクテル、イタリアの小皿料理「チケッティ」が楽しめるまさにアペリティーボのためのエリア! 奥にはハイスツールのテーブル席もあるので、グループならそちらを利用しても。
ここに来たならば、やはりアペリティーボの代名詞=オレンジ色のリキュール「アペロール」のカクテルからスタートを。
プロセッコとソーダで割る「アペロール・スプリッツ」やシンプルにソーダを加えた「アペロール・ソーダ」、注文ごとに絞ってくれるフレッシュオレンジジュースで作る「アペロール・オレンジ」は、どれも最初の一杯に最高! ロゴ入りのオフィシャルグラスがさらにイタリア気分を盛り上げる。もちろん、フレッシュオレンジジュースはちびっ子たちにもぴったりだ。
生ハムやトリュフ風味のクロケッタ、バーニャカウダなどがバランスよく入った前菜盛り合わせ「アンティパスト ミスト クラシッコ」をつまみながら、本日の主役である父母の到着をのんびりと待つ。この待ち時間もなんと楽しいこと…!
EATALY "LA PIAZZETTA "(6F)
電話番号:03-6280-6581
DINNEREATALY "LA GRIGLIA" (6F)
風が気持ちいいテラス席に集まり
「フランチャコルタ」で乾杯!
本日は父の日、母の日を合わせたスペシャルなお祝いの日。主役の父母(じいじとばあば)が到着したら、フロア奥の〈LA GRIGLIA(ラ・グリーリア)〉へ。〈EATALY〉のレストランでは日本初上陸となるイタリアン・グリル・レストランで、実は客席の奥には知る人ぞ知るテラス席があるのだ。陽気のいい時期だけオープンしており、まさに今はベストシーズン。ちなみに予約受付はしておらず、先着順でのご案内(利用は2時間制)なので、早めに〈LA PIAZZETTA〉でアペリティーボをしながらテラス席が空くのを待つ、というのがスマートかも。
銀座の中央通りを一望するテラス席でぜひやってみたいのは、イタリア最高峰のスパークリングワイン「フランチャコルタ」のボトルを開けること! シャンパンと同じ瓶内二次発酵方式で作られているブランドだから、“泡”が大好きな母も自然な甘みときめ細やかな泡にきっと喜んでくれるはず。本日は代表的銘柄の一つ「カ・デル・ボスコ」をソムリエでもある店長の桑村和也さんにサーブしていただく。「フランチャコルタ」のオフィシャルグラスが用意されているのも、さすが〈EATALY〉!
お料理は開放感あるテラス席に合わせてカジュアルなスタイルで。アンティパストと看板料理の3種のお肉のグリルをメインにした「グリル・ミスト・コース」で、あとは追加で好みのパスタ・フレスカ(自家製生パスタ)をセレクト。本日はサフランが色鮮やかな「コルツェッティ(サフラン風味の魚介ソースのパスタ)」に。食べ盛りの子どもたちには、イタリア産小麦粉を使い生地から店内で手作りするピッツァの中から、水牛のモッツァレラを使ったリッチな「マルゲリータ」を追加オーダー。かしこまらず、わいわい賑やかにシェアして食べるカジュアルさが、3世代ファミリーのお祝いにちょうど良い。
ちなみに、〈LA GRIGLIA〉はオーガニックのシャルドネで作るノンアルコールのスパークリングワインも用意しているので、飲めない人、飲まない人はぜひこちらを。ドライバー役のパパやママも、楽しくサルーテ(乾杯)!
*テラス席は予約不可・2時間制・先着順のため、早めの時間に来店して確保するのがおすすめです。
EATALY "LA GRIGLIA" (6F)
電話番号:03-6228-5553
[WRITER PROFILE]
藤森陽子|ライター
「食」を中心に執筆するフリーライター。レストランから酒場、スイーツ、コーヒー、お茶などを多数取材し、雑誌「BRUTUS」「Casa BRUTUS」「Hanako」などで執筆。ホテル愛が高じてホテル取材もライフワーク。創業時から〈GINZA SIX〉でアペロを楽しみ、今回の企画が実現に。
[CREDIT]
Photos: MEGUMI
Text: Yoko Fujimori
Web design :Tomohiro Tadaki [Thaichi]
Edit & Produce: Hitoshi Matsuo [EDIT LIFE], Rina Kawabe [EDIT LIFE]